今日はトアル山羊のオーブン焼きとトアルミルクとトアルチーズパン。いつもよりほんと少しだけ豪華だったりする。俺1人しか食べないけど気待ち的には2人で食べているつもりだから何ら問題は無い。

エポナの朝ごはんも今日は干したての草を用意した。何だか美味しそうに食べていると思う気がする。

あ、いやまあ毎日これを食べさせろと目で訴えられているような気もするけどね。

「マスター!洗濯終わりました〜!」
「おー、ありがとう。って、うわ、結構溜めてたから辺りが服だらけだな」

ソプラノに耳を傾けて窓からチラッと外を見ると洗濯を怠っていたものだから相当な量の服が干されていた。

あれ以来nameは俺の家政婦同然になってしまった。時々くるコリンなは「name本当にリンクの家政婦さんじゃない!」ってクスクス笑いながら言われる。俺は自分でやるからいいと何度も言ってるのにnameはじっとしていられないのか家事全般をこなしてくれる。流石にご飯は自分で作るけど、ね。

「おはようリンク。朝からいいご身分ね、nameに洗濯をさせるなんて」
「イリア! おはよう」
「はあ、相変わらず脳天気なんだから」
「イリア、おはようございます!」
「nameおはよう! こっちへおいで、休憩しましょう」

悪態をつきながらクスクスと部屋へと入ってくるイリア。俺は別にやらせているわけじゃないし、むしろ2人で家事をこなしたいと思ってるっていうかさあ。もんもん考える俺をそっちのけにイリアは手招きをしてnameを呼ぶ。

んん、nameのヤツすっかりイリアにも懐いてるなあ。誰にでも尻尾を振ってしまうようになったらいったいどうしようか。

「で、何しにきたんだよ?」
「いや大した用ってわけではないんだけれど」
「何?」
「レナード牧師がこの間からnameのこと怪しがってるのよね」
「レナード牧師が?なんでまた」

険しい表情を浮かべながらイリアはそう言った。何故レナード牧師がnameを怪しむ?殺戮兵器のことはどの書物にも記載はされていないはず。怪しむ必要が何一つない。それなのに、どうしてだ。チラリとnameを目にやるといつもと変わらず座り込んで電子音を立てている。見た目はどこからどう見ても人間だし、電子音だって耳をすまさなければ聞こえない。はあ、と息を吐きながら座り治そうとしたら俺の鼻先を小さな矢がかする。

「……………………name?」
「スミマセン、ネズミがいたもので」
「ネズミくらいいいだろ殺さなくたって!」
「ダメです何を仰ってるんですか。ネズミは私の耳をかじりにきたことがあるのです。私の耳は大事なのですよ!」
「そ、そっか…うん、ごめんな」

物凄い剣幕ではやしたてるnameに圧倒されて押し黙る。怖すぎ。

「ねェリンク、とりあえず伝えておいたからね」
「ん?あ、ああ。でも別にそんな気にすることでもないだろ」
「そうだといいけど…。とても嫌な予感がするの」
「はあ?何言って…」
「女の感は当たるんだからね!」

バシンと鈍い音を立てる俺の背中。イリアめっちゃ力強い!じんじんする背中をさすりながら俺はnameの頭を撫でて部屋から出ていくイリアの背中を見つめる。よりによってレナード牧師がnameを怪しんでいる?そんなまさか。2人は一度会ったこともあるし、nameだって、そんなバカではないはずだ。俺から自分のことを簡単に話したりしないよう言っておいたし。

「な、name」
「ハイ」
「お前さ、レナード牧師に自分のこと何も話してないだろ?」
「レナード……? ……ああ、ハイ。何も話していませんが…」
「が?」
「あの方の、私を見る目が、敵意に満ちておりました」

人の感情を感じ取ることはめっきりできないが、気配やらなんやらを感じ取ることにだけは長けているnameがそう言うのだから、そうなのだろう。いやでも、何故だ?どうしてレナード牧師はnameを怪しむ?

どう考えても、いくら悩んでも、終着点にたどり着かない俺は考えることを放棄した。きっと、なにかの間違い。イリアの気のせいだろう。俺はそう自分に言い聞かせて食べかけのパンを頬張った。


それから数日が経った。

今日は朝から土砂降りで、家の中がとてもじめじめした。nameも、何だか接続部分の調子が悪いらしくてぼんやりしている。ザーザー降る雨音に耳を傾けながら窓の外を見つめる。

「マスター」
「ん?」
「……私がもし、人間だったら、マスターはどうしていましたか?」

俺は困った。急な質問に戸惑ったというのもあるけど、nameが人間だったら?

考えたこともなかったから、俺はなんて答えればいいのかわからなかった。でも、俺、nameがなんだったとしても、俺は

「nameが人間でも、俺は今までと変わらず接するよ」
「…」
「俺のnameだし。人間でも、機械でも何でも、nameはnameだ」

そう言ったら、nameはその変わらない表情のままそうですか、と言った。うん、そうだ。nameはnameで、他の何者でもない。

雨音に混じってコンコン、とノック音が聞こえた。こんな雨の日に一体誰が?ドアを開けるとそこには神妙な面持ちのレナード牧師が立っていた。

「レナード、牧師……?」
「リンクくん」

首を傾げながら尋ねると、レナード牧師は俺のことを見ずにただ一点、nameの方へと視線を注いでいる。

「彼女を、連れに来た」
疑念

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