遠い記憶。私はなぜずっと忘れていたのだろうか。

「やあ、初めまして」

そう笑顔を浮かべながら私に差し伸べてくれた大きい手。

「君には名前がないのか。そうだなあ…。じゃあ、name。君の名前は今日からnameだ。」

名など必要ないと言われ続けていた私に、名をくれた。

「何でこの子らを殺したんだ。無駄な殺しはやめろ!」

殺すことしか命令されてこなかった私に、殺しをやめろと言ってきた。

「nameにはこれが似合うよ。僕が言うんだから間違いない!」

服などろくに来てこなかった私に、綺麗な服をくれた。

「name!今から散歩に行こう!」

子供のような笑みを浮かべ、私の手を引く。

「自分の気持ちを偽ってはいけないよ、素直になるんだ」

真剣な面持ちでそう、私に説く。

「君は兵器なんかじゃ、ない!一人の、女の子…人間だ!」

感情などない私に、人間の事など何一つわからない私に、貴方は人間だと言ってくれた。

「name、楽しい時は、目一杯笑うんだ!」

私の顔を包み込むように、手を添えながら太陽のように笑う。

「………それは、恋っていうんだ。人を好きになること。胸が苦しくなったり、暖かい気持ちになったり、守りたいって思うようになること。この人のそばに、いたいって、思うようになること」

胸が苦しくなって、訳が分からなくなってしまった私に、それは恋だと、貴方が教えてくれた。

「僕の名前?ああ、そういえばまだ教えていなかったかな。いいかい、name。僕の名前は」


リンク


脳に電撃が走る。ああ、どうして私はこんな、自分を救い、変えてくれた大切な人のことを忘れてしまっていたのだろうか。どうして、どうして!

大好きだったリンクのことを忘れていたのだろうか。ああ、どうして!

「マスターリンク!私は、あなたのことが好きです!」
「僕も、君のことが好きだよ。name」

前マスター、リンク。金色の髪の、空に、光に、森に、民に愛されていた偉大な、偉大な彼。

私に生きることすべてを教えてくれた。

兵器の私に、感情など何一つ無かった私に、リンクは、全て私にくれた。

私の全て。


私の、好きな人。
回想

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