ガタガタガタと物音を立てた窓。強風でも吹いてるのかな?それなら外に干してある洗濯物取り込まなくちゃ…。凄まじい物音に目を覚ました私はぼぅっとしている頭でベットから起き上がり眠い目を擦ってヨタヨタと歩いた。

とりあえず風が強いのか窓に何かが当たったのかよく分からないからとりあえず外の様子を見てみよう。

私は特に危機感を抱かずに窓を開けてみた。すると、窓が開くのを待っていたかのように何か大きいものが窓から入ってきた。
入ってきた、というよりかはなだれ込んできた、の方が正しいのかもしれない。

身体にずっしりとくる重みはほんの少し暖かくて、草の匂いがする。いや、それよりもこの感触は人?じゃあ一体誰なんだろう。

上に乗っかられているため起き上がろうにも起き上がれないし、その人物の顔も確認ができない。
月明かりを頼りに人物の顔を確認してみると、その人物は旅に出ている幼馴染じゃないか。


「りっ、リンク!?」
「ん…、その声、は……name?」


どうやらリンクは意識が朦朧としているらしく、私が声をかけるまで私だとは気付かなかったみたいのようだ。

リンクはいてて、と声を出しながら身体を起こした。

それにしてもいきなりの帰宅だ。一体何があったのだろう?また薬が無くなったのか?それとも盾が壊れたのか?それともただ単に空が恋しくなったのか?

聞きたいことは山ほどある。
とりあえず私は意識の朦朧としているリンクをきちんと立ち上がらせて椅子に座らせ、部屋の電気をつけた。


電気をつけてみるとまあ大変。リンクの体は所々傷だらけで出血の量も酷いじゃないか。
こんな状態でずっと地上にいたのか?こんなんじゃいつか死んでしまうかもしれない。

私は急いで救急箱を取り出して手当をしてあげた。ある程度手当を終わらせてたまたま家に置いてあった少量の薬も飲ませてあげた。

心なしかリンクの表情は先ほどよりも多少は柔らかくなった。

一息つくとリンクは眉を下げながら「自分の部屋かと思ったんだけどな…ごめん」と苦笑しながら言った。

確かにリンクの部屋と私の部屋は近いけれど間違えるほどではないはずだ。

本当に戦いで体力を浪費し残りギリギリの体力を振り絞ってここまで帰ってきたのだな、と思った。


「にしてもいきなりね。どうかしたの?」
「ちょっと…、息抜きに……」


あともう少しでゼルダのこと、助けられそうなんだと表情を柔らかくして言うリンクを見て私はホッとした。あと少しでゼルダが戻ってきてくれるんだ…、と思った。

にしても長い長い戦いだ。

リンクが帰ってくることはなかなか無かった。帰ってくるとしたら、今のような遅い時間か朝の早い時間。誰にも気付かれないような時間に帰ってきては道具を揃えてパッとまた地上へ降りていってしまう。

たまに私のところに顔を出しにきてくれるけど、本当にたまにだった。正直、もう少し顔を出してくれたっていいのではないのだろうか。本当に心配しているのだから。


「ね、旅はどう?大変?」
「最初の頃に比べたら慣れてきたもんだよ。敵の行動パターンも読めるようになってきたしね」
「一人でさみしくない?」
「ファイがいるから大丈夫」


にいっ、と笑うリンクの表情と喋るときに少しだけ動作をつけるときの手を見てみると痛々しくて見ているこっちの胸が痛くなる。

手は豆だらけだし、笑ってるつもりでも全然笑えてないし、体は傷だらけだし。

見てるこっちが、辛くなる。


もっと、頼ってくれたって構わないのに。
もっと、弱音を吐いたっていいのに。


「ねえ、リンク」
「ん?」
「つらくないの?」


私の質問した意図が分かったのか、リンクはまたさっきと同じように笑った。

そんな顔して、笑わないでよ。


「つらい」



辛いと言って笑うから

(その笑顔は私は嫌いよ)
(辛くてもやらなくちゃいけないんだ)
(前みたいに心から笑ってる笑顔を見せてよ)
(僕がやらずに誰がやるっていうんだい?)
(お願いだから、もう無理して笑わないで)


2014.12.16

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