どうやら、死んだらしい。
私が、じゃなくて勇者が。
私のそばにずっといた勇者が、どうやら死んだらしい。
アイツによると、深手をおいながらも終焉の者とやらを倒し、今にも倒れそうな状態であの子とアイツとあの人と一緒にいたらしい。
話のきりがいい所で勇者がおもむろに歩き出して時の神殿というところに行ったらしい。
あまりにも帰ってくるのが遅かった勇者を心配してあの人とあの子とアイツが探すと、勇者はどうやら時の神殿の中心部でポツリと座り込んで腹部を抑えて柔らかく笑いながらどうやら死んだらしい。
終焉の者を倒してあの子を助けて世界を救って満足でもしたのだろうか。
勇者のことだ、そうに違いない。
私がそのことを聞いたのは世界が救われて助けられたあの子が空に戻ってきたときにすぐに聞いた。
可愛らしい顔をグシャグシャに歪めて私に縋りつくように泣いた。
そんな光景を見ているアイツは不甲斐ない顔してて実にいつものアイツらしくなかった。
そりゃあ、さっきまで話していた、近くにいた勇者がいきなり死んでしまってはそれはそれは悲しいであろうに。
でも、私にはわからないよ。
最後にあったのはいつ?
サイレンのときに軽く顔を合わせたくらいだった。
それはいつのこと?
もう半年以上も前になることだよ。ずーっと会っていないんだ。
じゃあ今は何?
勇者が終焉の者を倒してあの子を助けて世界を救った。
じゃあ勇者は?
勇者は死んだ。死んだらしい。
死んでしまったらしい。
僕が帰ってくるまで待ってて、だって。最後に言った言葉。最後に聞いた言葉。
帰ってきた勇者はどうやら神殿にいるらしいけど、私は会いに行けないよ。
あの子は相変わらず目から絶えず涙を流してアイツはもうやるせない顔して。
私にはわからない。
どうしてそんなに泣くのか。
どうしてそんな顔をするのか。
私にはわからないよ。
勇者が死んだ。
死んでしまった。
勇者が死んでしまったらしい。
大好きな勇者。
私の大好きな愛しい勇者。
私がいるから世界を救うと言った大好きな勇者。
そんな勇者がいるこの世界が大好きだった。
キミのいない世界で私はどうやって生きていけばいいの。
ねえ、勇者リンク。
私を置いて空より高いところへ行かないでよ。
この世界にキミがいるから私はずっと待って生きてこれたのに
(そのとき、ふわりと風が吹き、キミの声がした)
(ごめんね)
(ような、気がしたんだ)
2014.12.26
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