なんてこったいなんてこったい!
現世での任務が思ったより長引いてしまって尸魂界に帰るのが3日も遅くなってしまった。普段なら長引くことに喜んでいる。だって大好きな現世に長い間いれるから!だってそうでしょ?こんな面白いところにいれるなんて楽しすぎるもの!

でも今回は事情が全然違かった。
幼馴染の冬獅郎の誕生日が20日で、それまでには任務も終わって帰れる予定だった。毎年冬獅郎の誕生日を祝うのが私の恒例。人気者の冬獅郎だからちゃんと祝えることができないだろうから、日付が変わってから冬獅郎の部屋まで行って、クラッカー鳴らして、顔面にケーキ投げつけてってところまでシチュエーションしてたのに。

それなのに任務が伸びてしまって当日に冬獅郎の誕生日を祝うことができなかったの!伝令神機使おうと思ったって生憎充電が切れてて使い物にならない。任務が終わった私はすぐさま執務室へと向かった。


「ただいま戻りました日番谷隊長はいらっしゃいますか!!!」
「あらnameおかえり〜。隊長なら今いないわよ」


勢いよく執務室のドアを開けると、そこには松本副隊長しかいなくて。あれ?いつもなら冬獅郎がいるはずなのに…どうしていないんだろう。


「ひえ?! えっ、え!! 何でいないんですか?!!?!」
「さぁね〜? 何だか忙しそうにしてたわよ」
「ええ…? 何で…? ……というか松本副隊長お仕事の方は?」
「アンタこそ任務の報告書は?」
「や、やりますよこれから…」


松本副隊長がこの時間に執務室にいること自体珍しいのに、何なんだろう。しかも仕事は終わってるみたい?いやいやまさか松本副隊長に限って仕事が終わってるだなんてそんな…。煎餅をボリボリ食べている松本副隊長を横目に見ながらぼんやりと冬獅郎の霊圧を探る。ああなんだかお腹空いてきた…。


「終わったら私の机に置いておいてね! あ、あとこの書類十三番隊によろしく〜!」
「ちょ、待っ、え?!」
「ちょっと出てくるわね! あ、あとで三番隊から荷物届くから受け取っておいて〜」


突然松本副隊長が立ち上がったかと思うと早口で言葉をまくしたててサッと執務室から姿を消した。いやいやいや、嘘でしょ?仕事残ってるんじゃないか!ポツリと取り残された私は仕方なく報告書を書くために引き出しから紙を取り出した。

ガタンと音を立てながら椅子に座ったのと同時に、冬獅郎の霊圧を五番隊の方から感じた。…ああ、もしかしたら雛森副隊長と一緒にいるのかな。そう考えたらとてもブルーな気持ちになった。







ガラッとドアの空いた音にビクリと体が跳ねた。やばい寝てた。まだボンヤリとする頭をブンブンと振って目を覚まそうとした。


「…name? 帰ってたのか」
「!!! あっ、あ!ひつ、あ!日番谷隊長!!!」


執務室へと入ってきた人物の声で眠気がブワッと吹き飛んだ。冬獅郎だ!!!勢いよく立ち上がったから椅子が倒れた。その音と私の勢いに驚いた冬獅郎は私を見ながら目をぱちくりさせる。


「あの!あ、あの!!おた「報告書は?」……松本副隊長の机に置いてあります……」


そうか、と言うと私の横を横切って松本副隊長の机まで行っては私の報告書を読み自分の机へと置き直した。え、あ、あれ?なんか、様子が…。


「あ、あの…?」
「name」
「はい!」
「こっち来い」


人差し指をくいくいと動かしながら言う冬獅郎。なんか、なんだか!様子がおかしい!渋ってたらギロリと睨みつけられたのでいそいそと机越しに冬獅郎の前へ。何でこんなピリピリしてんの?


「な、なんでしょう…」
「俺に何か言うことがあるはずだ」
「…え、と?」
「…」
「お、お、お誕生日おめでとうございます…?」
「何で疑問系になってる。それよりももっと言うことがあるだろうが」


え、え、ええー?!知らないよそんなの!お誕生日おめでとうよりも言うべきことなんて何もないよ!え、冬獅郎何を言ってるのさっぱり分からない。て、ていうかおめでとうって言ってるのに何この反応の無さ!え、なんかすごいショックなんだけど。何を言えばいいかも分からず困ってると冬獅郎が大きくため息をついた。ため息つきたいのはこっちなんですけど…?!


「遅い」
「え?」
「遅いって言ったんだ!」
「え、あ、え…ごめん、なさい…?」
「何なんださっきからお前は! 任務は伸びるわこっちに戻ってきてもすぐ俺に顔は出さないわ!何なんだ!」


机をバァン!と叩いて怒鳴りつけられる。あまりの理不尽な物言いに私は言葉も出てこなかった。というか、子供か!


「な、な、何!?日番谷隊長こそ何なの!任務が伸びたのは私のせいだって言いたいの?!違うから! ていうか!こっち戻ってきてすぐ日番谷隊長に会いに行こうと思ったのにここにはいないし!そっちがどっか行ってたんでしょうが!バカ!」
「…おい今なんつった」
「バカ!バカって言ったのバカ!分かる!?」
「バカはどっちだ!!!俺がどれだけ心配したかも分からねえくせに!!!!」
「心配?! 心配って何?!!? ……え、心配って何…?」


しまった!とでも言いたそうな顔をしてはガタンと立ち上がって私を睨みつける。な、なんだっていうの…!


「……任務でまた怪我したんじゃねぇかと思っただけだ」
「………あ、えっと……怪我はない、です…」
「…そうか」


そして気まずさが振り出しへと戻った。な、なんだか調子が狂うなあ。


「あの!」
「何だ」
「誕生日!おめでとう!」
「…あぁ」
「…」
「…」
「誕生日おめでとう!」
「…あぁ」


な、何この反応!腹立つ!むすーっと顔を膨らませてもただ冬獅郎はじっとこっちを見てるだけ。まだ怒ってるの?私もうどうしたらいいかも分からないし!


「誕生日!当日に祝えなくてごめんね!いつも日番谷隊長には感謝してます!大好きです!!」


ヤケになって大きい声でそういえば冬獅郎はみるみるうちに顔が赤くなっていった。こういえばもう気が済むでしょ!私だって誕生日きちんと祝いたかったんだから!それくらい分かってよね!


「バカ野郎! 声がデケぇ!」
「わけわかんない反応するからでしょ!」
「……………来年は、ちゃんと計画的に予定組めよな」
「…任務は私が入れたんじゃないのに」
「うるせえ」
「…はあい」


何とも言えない空気のままお互いじっと見つめあってたけど、急におかしくかんじちゃって吹き出した。何笑ってんだと言われたけど、なんか、幸せかもしれないなあって思った。

忘れた頃に三番隊からの荷物が届いて、冬獅郎が勝手に中を開けてみると松本副隊長達からの遅めのバースデーケーキが入っていた。

お互い顔を見合わせてはまた吹き出した。何だか、変なの!



遅くなりましたが

キミに沢山の笑顔と幸あれ!大好きだよ!!


2015.12.23

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