私はてんで料理ができない。それはもう壊滅的にできない。お湯を沸かすことと、米を研ぐことくらいならできる。その他は本当にダメなのだ。

卵を茹でるだけのゆで卵でさえ私は作ることが出来ない。作ろうとしたら卵が爆発する。どういうことなのか私にもさっぱりわからない。卵焼きを作るにしたって、うまく巻けずにボロボロになってしまう。しかも黒こげ!巻けないならスクランブルに挑戦だ!と思ってもガチガチに固まる。最早ブラックボール…、いやダークマターだよこれは!なんなの本当に。

あと何故か何かを炒めようとすると大抵何かが燃える。この間は近くに置いてたタオルを燃やした。どう考えてもこれは私に料理をするなとでも言ってるとしか思えない。でも女としてこれはどうかと思うのだ、本当に。

前にこっそりみんなを驚かせようとしっかりレシピを見て、調味料も1グラムの狂いもなく用意して、炒める時間も煮込む時間も1秒の狂いもなく行ったというのに、キッチンが爆発した。
もう何がなんだかわからなくてその場では泣きだしてしまったし、爆発音に気付いたみんながゾロゾロとキッチンに顔を出しては、「料理できないんだからキッチンに立つな!」と怒られた。

自分の庭と言ってもいいであろうキッチンを料理もできないクソ女に爆発させられたにも関わらずサンジくんは困ったように笑いながら「気にしないでくれ」と言ってくれた。私とても胸が痛い。


せめてサンジくんだけにでもと思って、何かを振舞おうと決めた。料理だって練習すればできるようになるさ!キッチンを爆発させた謝罪の意を込めて卵焼きを作ることにした。

夜にみんなの目を盗んで卵焼きの練習をしたのはいいんだけど何度か卵を爆発させてみんなが起きてこないかヒヤヒヤしたものだった。音に敏感なチョッパーにバレてしまったけど、どうにか練習してることは黙っててもらった。

そして3ヶ月の練習を経て見た目だけまともな卵焼きを作ることが出来た。ほーらね!私だってやればできる子なんですよそうなんですよ。サンジくん、どんな反応するかな喜んでくれるかなと胸を踊らせながら最高傑作の卵焼きを持って男部屋へと顔を出した。


「サーンージーくん!」
「nameちゅわあああああああん!なんだい、俺に用でも?」
「あっ、あの、これ!前にキッチン爆発させたお詫びって言ったらあれなんだけど…」


スッ、と差し出す卵焼き。それを見たサンジくんは目を丸くさせた。そりゃそうだろう。食材とキッチンを爆発させる私がこんな素晴らしい形の卵焼きを作ったのだから!サンジくんは信じられないのか卵焼きと私を交互に見て本当に作ったの?と目で言う。そうよ、私が作ったの!


「ありがとうnameちゃん。キッチンのことは別に気にしなくても良かったのに」
「いやそういうわけにもいかないよ」
「これ、俺が貰っても?」
「うん、サンジくんに食べてもらいたい」


め〜ろりんめ〜ろりん!と体をくねらせながら男部屋で暴れ回るサンジくんに笑みをこぼす。へへ、喜んでもらえた!

サンジくんは私から卵焼きを受け取ると、その大きな手を私の頭にポンと載せてうっすらと笑みを浮かべた。


「ありがとな、nameちゃん」


ちょ、ちょちょちょ、ちょっとその笑みは不意打ちというか予想外ですよサンジくん!

顔に熱が帯びていくのを感じて私はすぐさまその場を後にした。は、はー!心臓に悪いっすよサンジくん。まだドキドキする心臓に手を当てながら次は何を作ってあげようかなあと考える。

キッチンから顔を出したルフィに突然「おめー何か作ってたんだろ!」と言われ、午前中はしつこくルフィ追いかけ回されることになった。チョッパーのやつ、ルフィに話したな!



卵焼き

(彼女からもらったその卵焼きは、とても甘かった)
(練習で作ってた卵焼き、全部しょっぱかったのに)
(走り回る彼女の姿を見てキュン、とくる)
(キュン、てなんだ?)


2015.09.27

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