昼の購買戦争を無事に勝ち抜いて戦利品を持ってナミの待ってる教室へと行こうとしたときだった。我がサッカー部1年エースのルフィのお兄さん、エースさん(エースエースってややこしいな!)がサボさんと一緒にはあ、とため息をついてるのを見かけた。

う、うわあ、纏っている空気がとても重すぎる。声をかけたくないと思ったけど運が悪いのかサボさんとバッチリ目が合ってしまった。最悪だ。


「こ、こ、こんにちは」
「おお、name」
「エ、エース先輩こんにちは。げ、元気無いですね…?」
「聞いてくれよ…ルフィのやつ、あいつ朝起きてこねえから置いていったんだけどよ……ついさっきジジイからルフィが熱だっつってよお…」
「ええ?!ルフィが熱!?!!」


思わず大きい声を出してしまった。サボさんにしぃ、と注意されて慌てて口を抑える。い、いやいやいやそれよりもエース先輩今なんて言った?ルフィが熱?あのルフィが?年中半袖で走り回ってるようなルフィが?本当に?信じられなくてじとお、とエース先輩を見つめるけど下がりに下がった眉毛がどうも嘘ついてるとは思えなくてルフィが本当に熱出してるんだなと思った。信じられない!


「で、で!ルフィ今大丈夫なんですか?」
「ジジイも家にいねえし俺たちも帰るにせよこれから面接練習控えててすぐ帰れなくてよお…」
「えっ、ルフィ今1人ってことじゃないですか」
「そうなんだ。サボろうにせよコイツ今日サボったら進路活動停止になるから帰れなくって」
「サボ先輩は?」
「俺も面接練習」


今にも泣き出しそうなエース先輩と困ったように笑うサボ先輩。ああこれは相当ルフィやばいんだろうなあ。

私達1年は今日午前授業で終わるからウソップあたりにでもルフィのところ向かわせたほうがいいかもしれない。


「で、だよnameちゃん」
「へ?」
「これからルフィのところに行って看病して欲しいんだけど」
「え?!私がですか?!!」
「そ、nameちゃんが」
「な、無理無理無理!無理ですよ!」


サボ先輩からのご指名入りました!
…いや待て待て待て待て何故私がルフィの看病をしに行かなくちゃならないんだ。私は今日これからお昼を学校で食べてそのあと優雅な部活動(サッカー部マネージャー)に励もうと思ってたのに!

断ってみたもののサボ先輩の困ったような笑顔がいつの間にか有無も言わせないような黒い笑顔になっていてとてもじゃないけど逆らえなかった。しぶしぶ行きますと小声で言うとエース先輩がぶわっと涙を流してありがとうありがとう!と私に泣きつきながら言った。な、な、なんで私チョイスなの…なんでだ…!


「じゃ、じゃあルフィの看病…してきます…」
「おう!よろしくなname!」
「はい…」


エース先輩の眩しい笑顔にため息が出そうになるが抑える。その場を後にしようとしたらグイッとサボ先輩に腕を引っ張られた。


「な、なんですか?」
「さっき購買でプレミアムジューシー肉詰めパン買ってたろ?それ、ルフィの大好物だからあげてやってね」


嫌だよ何言ってんのサボ先輩!







「お、お邪魔しまーす…」


あのあとサボ先輩から家の鍵を借りてルフィ宅までやってきた。鍵なんて使わなくても玄関が開いていた。思わず不用心だなと小声で呟くとうう、とうめき声が聞こえて身構えた。


「え、えー…、す?」
「ルフィ!」


うめき声の正体は分厚い毛布にくるまったルフィだった。何でこいつ部屋で寝てないんだ。何で玄関先で毛布にくるまってるんだ。ほんとに馬鹿なんじゃないのかこいつは!

顔を真っ赤にさせて体をブルブル震わせるルフィに私は同じ目線にしゃがみ込んで額に手を当てる。クソあちー!


「何でルフィこんなところにいるの!何で部屋で寝てないの!」
「ん…、nameか…?なんで、ここに」
「エース先輩とサボ先輩に頼まれたの!もー!何でこんなところにいるのほんとに!とりあえず立てる?部屋行こっか」


焦点の定まらないルフィにあれこれ言ってもきっと理解してくれないだろうから私はルフィの細っこい体に腕を回してどうにか2階にある部屋まで運んだ。細い体してるくせに、案外重くて2階に運ぶだけでもう私疲れてしまって、とても帰りたい。

とりあえず熱さまシートも貼ってないおでこに熱さまシートを貼って、とりあえず体温を下げてあげなくちゃと思って脇の下にも貼ってあげた。よほど冷たかったのか「冷てェ!」って言って振り上げた手が私の顔に当たったのは熱に免じて許してあげることにした。私優しすぎる。

台所を勝手に使うのも気が引けたから事前に買っておいたチンするタイプの卵がゆをチンしてそこに梅と鮭を突っ込んでおいた。りんごも切ってあげた。ゼリーとポカリも買ってあげた。

一通りやれることはやってあげた。ルフィもさっきに比べたらだいぶ楽そうな顔してるし。これならきっとすぐ治ると思う。はあほんと私できる女ね!


「あり、がとな、name」
「へっ?!あ、ううん、いいのいいの!」
「ししっ、…お粥、まだ食いてェな」
「……そんだけ食欲あるなら大丈夫そうだね」


にへえ、と笑うルフィにほんの少し癒されたり。いつものあの眩しい太陽みたいな笑顔のルフィも好きだけど、この顔のルフィもたまにはいいかも。へへ。いいもん見れちゃった!


「っし、じゃあルフィあとは1人で大丈夫?」
「ん…、」
「ん、それじゃあ私帰るからね。ちゃんと寝てるんだよ?」


帰る前にルフィのぬるくなった熱さまシートを取り替えてあげようとおでこに手を伸ばしたら突然ルフィに手を掴まれてグイッと引き寄せられた。

突然のことに驚いて頭がついていかない。ててて、ていうか距離、ちか!近い!軽く覆い被さるような体勢で、そんでもっていつの間にかルフィの手が私の背中と後頭部に回されていて上手く身動きが取れない。こ、これ、顔あげたらすぐルフィの顔があるやつだ。あかんやつや!熱のせいでルフィの体温が高くて、そのせいなのか、ルフィと近いからなのか分からないけど、私の体もどんどん熱くなってくる。


「る、ひ?」
「……頼む、まだ…、帰るなよ…」
「え、?」
「1人だと、なんか、こえーし、…」


はあ、とルフィの熱い息が耳にかかる。うっ、いやそんなことを言ってる場合じゃなくて!ルフィの様子がおかしい。熱ってこんなことになるの?ルフィ熱だとこんな甘えたさんになっちゃうの?どどど、どうしよう私こんなの、刺激が強すぎて!頭が回らないよ!


「ル、ルフィ、大丈夫。まだ、帰らないから。一緒にいてあげるから」
「…さんきゅ、な」


安心した様子のルフィだけど私の背中と後頭部に回されている手が緩むことはなかった。やだ待って!こんな状況もし帰ってきた先輩たちに見られたりしたら誤解されちゃうよ!


「………あのな、あそこ、なん、なんか……いんだよ…」
「へ?」
「あ、ほら」


指差したその先には黒く光る、カサカサ動く、ヤツがいた。


「name…、俺ダメだ……あいつ、こえーよ…」
「バカ言ってんじゃないよ私の方が怖いよバカー!ルフィのバカー!」


咄嗟にルフィの手を振り払って私はルフィの布団の中へと潜り込んだ。アンタいつもヤツを見かけても笑って踏み潰してるじゃない!なんで!なんでこんなときに限って!もうバカ!



ほんとバカ

(ルフィー!帰ったぞ!!大丈夫か!)
(え、えーすぅ〜!あそこ、あそ、あそこ!)
(先輩!そこ!そこに!ヤツが!早く!!)
(…………nameちゃんルフィの風邪移っても知らないよ)


2015.09.23

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