※学パロ


あー、やばい、忘れ物した。

バックの中に入れたと思っていた財布が入っていないことに気付く。おかしいなあ、確かにロッカーの中に入れておいたのをきちんと取り出したはずなんだけど。

折角1階まで降りてきたというのに、財布がなければ家に帰れない。また3階まで上がるのかと思ったらめんどくさくてはあとため息をついた。


「…あれ、」


結局財布はロッカーの中にあった。入れたもんだと思ってたけど、ほんとにおかしいなあ。

それより、声を上げたのは教室にまだ人が残っていたからだ。確か、あれはnameって言ったかな。最終下校なのに、何してんだ?


「よ、」
「…あ、」
「こんな時間まで何してんの?」
「んー、何してんだろうね」


会話にならない。

ちらりとこっちを見てはすぐに手元に目線を落とす。初めて喋ってみたけど、なんか、すごい取っ付きにくい。


「帰らねえの?」
「帰るよ」


…………あ、そう。そりゃそうだよな、帰るよな。やばい待て、ほんとに会話が続かなくてこれは大変よろしくない。

ガタンと音を立てて立ち上がったnameを目で追う。動きに合わせて揺れる髪の毛が、綺麗に見えた。


「帰らねえの?」
「…だから、帰るってば」
「違くて」
「え?」


なんだか、ここでチャンスを逃すのもちょっと悔しい。すごい攻略したい。この無愛想を、笑わせてみたい。


「一緒に、帰らねえの?」
「は?誰と」
「俺と」


眉間にシワを寄せるname。お前今めんどくせえなって思ってんだろ顔見てもわかるしオーラが出てる、オーラが。


「帰るわけないでしょ、どいて」


荷物を持ったnameがそばまできた。あ、案外背が小さい。あと睨みつけてるんだろうけど、見上げられてるようにしか見えなくて。やばい。上目遣い可愛い。

一向にどく気のない俺にしびれを切らしたのか、nameはグイッと俺の方を押してそのまま教室を出て階段を降りていった。


あっ、待て。これじゃ逃げられる。

俺は足早と階段を降りていくnameのあとをついていった。そのあとに待つ悲劇を知らずに。



最終下校

(な、一緒に帰ろうぜ)
(うるさいなあ、しつこい!)
(ばちーん)
(いっってぇ?!!?)


2015.09.05

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