ぐっ、くそめ。リンクのヤツ、本当アホ。あの居眠り大魔王。くたばれ!くそめ。うう。


そう、事の発端はホントにしょうもない。

ただ単にリンクが寝坊して、いやただ単にじゃないなこれは。リンクは今日日直でホーネル先生からあれやこれや色々頼まれてたのに。あのバカ、寝坊しやがって。リンクと仲良いからって、全部私に日直の仕事が回ってきた。

ていうか、ゼルダの方がリンクと仲良いし。先生何を見てるんだし、どこ見てるんだし、ばっかじゃないの。あーほ。ばーか。

というわけで、とりあえずもう私がやるべきではないことをリンクの代わりにやってやったわけなの。もう、それなのに、呑気に寝坊遅刻してきたリンクは私に感謝の言葉1つも寄越さないで、私が楽しみに残しておいたパンプキンクッキー全部食べたの。もうほんとにありえない。永眠してろよあいつほんとに。蒸発しちゃえ!

あまりにも腹が立ったもんで熱々のパンプキンスープをリンクの下半身にぶちまけてやった。ぶん殴られるのがわかってたから私は一目散にその場から逃げた。後ろからリンクの叫び声が聞こえた。もう気分はサイコー、ざまあみやがれ!


って気分良くしたのはいいけど、般若みたいな顔をしたリンクが私を探し回ってるとバドから聞いて私はスカイロフトから離れた小島へと逃げた。

逃げたのはいいけど、いいんだけど、ここ、コウモリ出てくるんだよねえ!もうさっきから地味に攻撃受けててもう腕傷だらけ。髪の毛もぐっちゃぐちゃ。下手に動いたらバレるし、逃げられない、もう散々。

私の可愛い可愛いバードちゃんが心配そうに私の方を遠くから見つめるけど、アンタこっち来たら許さないんだからね。クソファッキンコウモリに攻撃されたりしたらどうするのさ。もし攻撃されたら、私は素手であのクソファッキンコウモリをぶちのめしてやる。多分できないけど。

あ〜あ、どうしたもんかなあ。痛いし、外も暗くなってきたし、夜は飛行禁止だからそろそろ帰りたいのに、この状態じゃあなあ。はあ。


膝を抱えてそこに頭を埋める。うう、目が熱い。
ぽたぽた聞こえるのは、きっと気のせいだろう。汗だね、汗。私が涙なんかを流すわけが、ギャッ!

…ギャ?
クソファッキンコウモリの可愛げのない鳴き声が聞こえて、何かと思って顔を上げてみたらそこにはぜーはー言いながら私を見下ろす鬼神リンク(あ、違うか)がいた。


「あ、あ、……」
「何、してんだよこんなとこで」
「…キミから逃げてた」
「そりゃご苦労サマ」


バタバタと五月蝿く羽を動かす音もいつの間にか聞こえなくなってて、ああきっとリンクが倒してくれたんだなあ、と。

ドサッと私の隣に座るリンクをちらっと見る。私の視線に気付いたのかリンクも私を見るけど、その目には怒りがとてもこもっている。いや当たり前か。


「熱かったんだけど」
「だってリンクお礼の一つも言ってくれないんだもん」
「…ごめん、ありがとう」
「うむ、それでいい」
「…僕にも謝れよ」
「大変申し訳ございませんでした」
「うわ、うざ」


こちとら誠意を込めて謝ったのになんだよその言い方。ムッと睨みつけてみたら、リンクはクスクス笑ってて。ああ、なんだ、そんな怒ってない。


「ほら、帰るぞ」
「いたっ?!」


スッと立ち上がって、私のことを立ち上がらせようと腕を掴んだ瞬間、激痛が走る。私の発した声にビックリして手を離したリンクは一瞬目を丸くして、すぐに眉間にシワをよせて私の身体をじいっ、と見た。


「いつからここにいたんだよ?」
「かれこれ3時間」
「は?本当バカ、お前本当バカ。あーありえない。本当バカだろ」
「な、何度もバカバカ言わないでよ!」
「傷、残るかもしれないだろ。本当バカだよ」


眉を下げながら私の腕に手を添える。また傷にあたってビクッと体を震わせる。はあ、とため息をつかれるのが分かった。五月蝿いなあ、だったらもっと私を見つければよかったでしょ。ふん。

ふいっ、とそっぽを向いたと同時にリンクは私の両脇に手を突っ込んで米俵のように担ぎあげた。ちょ、もう少し優しく扱ってよ!


「早く戻ってゼルダに傷見てもらうか」
「いいよ、自分で手当する」
「うっさい不器用女」
「うるさい寝坊遅刻野郎」


本当腹立つこいつ。

ぴゅう、と指笛を吹いてリンクはあの赤いロフトバードを呼ぶ。私のバードちゃんには負けるけど、この子も相当綺麗な子。私のバードちゃんも赤かったら良かったのになあ!

スカイロフトまで戻る途中は、一言も交わさなかった。交わさなかったけど、リンクは私を抱える手を緩めることはなかった。今なら、言ってもいいかなあ。


「ね、リンク」
「ん?」
「ほんとにね、腹立ちすぎてね、リンクが作ってる途中のロフトバードの彫刻ぶっ壊しちゃった」


そう言ったのと同時に体に回されてたリンクの感覚が無くなる。気付いたときにはもう遅かった。リンクに投げ飛ばされて私は空に飛んでいた。いや飛んでるとかそんなメルヘンチックなこと言ってる場合じゃない、落ちてるから!

急いで私も指笛を吹く。颯爽と飛んできてくれたバードちゃんは私が落ちてるのを見てクエー!と鳴いた。そうよね、びっくりするよね、私もびっくりしてる。そしてぼすん、とバードちゃんの背中に着地する。


「いきなり何すんのよリンク!」
「お前!本当!いい加減にしろよな!!」


大勢を立て直してリンクへと叫べば、いつの間にかリンクはロフトバードの上に立っていて、何をするのかと思ったらおもむろに爆弾を2つほど取り出した。

あ、まずい殺される!



キミに最高のプレゼントを

(コノヤロー喰らえ!)
(あー!やめて!ばか!バードちゃんが怪我したらどうすんの!)
(あの彫刻!お前に渡すために作ってたのに!ほんとふざけんな!)
(どうせ投げるなら彫刻投げて!爆弾やめて!あ!ぎゃー!)


2015.09.05

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