勝負だあーッ!

ジム内に響き渡ったどでかい声。朝っぱらからなんだ、どうしたっていうんだ。眠い目を擦ってまだ誰も来ていないジムトレーナーの代わりにまだ開く時間でもないジムの扉を開けた。


「………どちらさん?まだジムの時間じゃねえんだけど」
「! お、お前ジムリーダーのグリーンだな!勝負しろ、私と勝負しろ!!!」


いや本当に朝っぱらからなんですかこのお子ちゃまは。人の話聞いてねえし興奮してるし何ほんと、どうしちゃってるのこいつは。俺はボリボリ頭を掻きながら頭一個分は小さい女に目線を合わせた。


「名前は」
「name!」


nameというその女はまだどことなく初々しさがあって、初めて旅に出る夢と希望が溢れるトレーナーのように見えた。言動がハッキリしているのはいいが、身なりがダメだ。旅に行く服装じゃない荷物も少なすぎる。本当に駆け出しトレーナーなのであろう。


「お前ジム初めてだろ」
「なっ、なんでそんなことがわかるの?!スゴイ!」
「手持ちのポケモンは?」
「この子!」


そういって自慢げにモンスターボールを取り出しては出てきたポケモンがピカチュウ。シロガネ山にいるアイツを思い出す。いやそんなことより手持ちはこのピカチュウだけ?それは流石に無理もあるだろう本当に何も分からないらしいな。


「あのなあ、そのピカチュウ一体で俺は倒せない。つーか俺までにたどり着けねえぞ」
「わたしのピカチュウ、すっごくすっごく強いんだからな!バカにしないでよ!」
「分かった分かった、とりあえずまだジムの時間じゃねえから諦めな。昼頃になってから来い」


ぐしゃりとnameの頭を撫でてからジムへ戻ろうとするとグイッと服の裾を引っ張られた。突然の行動であったのもあって俺は睨みをきかせた。

だがそんな俺の睨みに怯むこともなくnameは真っ直ぐと俺を見つめる。その目、生意気だな。いい度胸してやがると俺の中の闘争心にかすかに火がついた。


「勝負、して!」


強情な女も悪くない、俺はにやける口元を隠しながらnameに向き直った。


「いいぜ、特別に勝負してやる。本当はバッチ6個以上持ってねえと勝負は受けねえんだけど…、特別な」


ニンマリと笑ってみせるname。ほんと、いい性格してる。俺はジムの中へと案内した。あんなに眠かった体も、今はたたかえる楽しみからすっかり覚醒していた。


「ピカチュウ一体だからって、容赦はしねえぞ!いけ、ピジョット!」
「ピカチュウ!」


向かい合う俺らと相棒たち。場の空気が張り詰める。


「先攻はそっちでいいぜ」
「10まんボルト!」


そう言い放った瞬間、俺のピジョットは倒れた。何が起こった?困惑する俺はチラリとnameを見る。ニヤリと弧を描くその口元が腹立たしくて、俺の口角も自然とあがった。


「言ったでしょ、私のピカチュウ強いよ、って!」


腹立つ。

明らか俺に勝てるって顔してやがる。こういうの、悪くねえ。



越えさせない壁

「俺に勝ってから言えよ。余裕ぶっこいてると泣くぜ」

そう言うとnameの癇に障ったのかムッとした顔をして「早く次のポケモン出しなさいよ!」ときゃんきゃん騒ぎ立てた。

こんなお子ちゃま、俺が本気出すまでもないさ


2015.01.18

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