やっとここまできた。ジムバッチも全部集めて、ポケモンリーグにも挑戦して、チャンピオンにも勝って、ずっと連れ添ってきた仲間たちを育て上げ、やっとここまできた。シロガネ山まで、きた。

ウワサの少年。たった短い期間でチャンピオンにのぼりつめて、ロケット団も解散に追い込んで、そんな少年が更なる強さを求め、ここに、シロガネ山に居座っているって。そう聞いた。

実際どこまで強いだとかそんなの知らないし、真のラスボスはこの少年なんでしょう?なら私が倒すまで。強さばかり求めすぎてた私、でも大切なことに気づいた私は今までよりももっともっと強くなっているはず。少年の名前も知らないし何も分からないけど今の私の強さを証明できるのはこの人だけ。

高く高く、頂上が見えない山。私は意を決してその山に足を踏み入れた。まるで私を拒むかのように吹き荒れる吹雪。いい度胸してるじゃない、絶対に少年を見つけ出してバトルして勝ってやるんだから!


そう意気込んだのは良かったけれど吹雪に勝てるわけもなくて私はよく見えない視界の中のっそりのっそり歩き回っていた。


(周りの景色、真っ白……何も見えない…ここどこなの………)


寒さで頭が働かない。たくさん着込んで完全装備でシロガネ山に来たのはいいものの、少年のところにたどり着くまでに私がへばりそうだ。辺りどこを見回しても真っ白。時折遭遇するリングマやイワークたちを倒すことは容易いけれどもどうも吹雪だけは倒せそうにない。私が倒される。やばい。


(ここで…おしまいなのかなあ)


歩くのも億劫で、果てのない道を歩くのもバカバカしくて、私はその場にしゃがみ込んだ。寒い、寒すぎる。何でずっとこんなところに居座っていられるんだよおかしいじゃないか。もしこれで私が少年を見つけたとしてもまともな勝負ができるはずがない。無理だ。勝てない、きっと。

意識が遠退くなか、足音が聞こえた。顔を上げるとああ、大変だリングマじゃないか。どうしよう。手が悴んでモンスターボールが取れない。大変だ、どうしよう。これは大変だ。


リングマが大きく右手を振り上げた。

私はもうダメだと思い目を閉じて襲いかかる攻撃を覚悟した。


「かみなり」


突如聞こえたその声。その瞬間に聞こえる雷鳴。目を開けたらリングマが倒れていた。何が起こったのかイマイチよくわからなくてただただ私は目をぱちぱちさせた。

近づいてくる足音、さっきの声の主なのだろうか。助けてくれたのだかお礼を言わなくてはならないのだけどどうも体が動かない。


「………生きてる?」


さっき聞いた声と同じ。きっとその人なんだろう。にしても開口一番酷いことを言うもんだ。体は動かせないけどせめてお顔を拝見してやろうと思って目だけを相手に向けた。

赤い靴、黒のズボン、赤のジャンバー、肩に乗っかっているのは…ピカチュウ?そして、赤い帽子。

あれ、これってシロガネ山に居座ってるあのラスボス少年なんじゃないの?寒くて寒くて口もまともに動かせず声も出せない。少年はしゃがんで私と目の位置を合わせた。


「…生きてる?」


また聞くのか。見て分からないのかクソガキ!(年齢は変わらないけど、さ)近くで顔をよく見てみたら案外イケメンなのね。赤い目に、私が写り込んでる。死にそうな顔してるな、こりゃ生きてるかって聞かれて当然なのかも。


「助けて、く、れて……あり、が………と」
「…うん」


頑張ってお礼を伝えたけど口が回らないし吹雪の音がうるさすぎてちゃんと伝わったのかどうかは定かではないけど少年は頷いてくれた。

キミが、カントーで一番強いんでしょう。
私と勝負しなさい。


「わたし、と、………勝負…して…」


焦点もあわず今にも死にそうな声でそう告げた。少年はというと無表情でジッと私を見つめる。なんだよ、言いたいことあるなら言えよ、バカ。言っておくけど私強いんだからね。


「………あきらめてくれる?」


対戦拒否された。ばかやろう、強い者求めてるんでしょ私と戦いなさいよ、ばかやろう。少年の言葉が深く胸に刺さった私はグッと目を閉じて膝に顔を埋めた。こんな死ぬ思いして、ここまで来たのに、こんなのってないよ!

目を閉じたからなのか、体力が限界からなのか、少年の言葉がよほどショックだったのか、私の意識はぷっつりと切れた。意思の途切れそうな私の体はこてん、と倒れた。クッソ、どうにでもなれよ。


「……こんな状態じゃ、流石に俺も戦う気はない」


少年がなんか言ったけど朦朧としている意識はちゃんとその言葉を聞き取ってはくれなかった。少年は立ち上がるとリザードンを出して私をリザードンの上に乗せた。

ああ、どこに連れていかれるのかなあ。暖かいところがいいな、なんちゃって。


落ちないように支えてくれている少年の腕の中でぼんやりと考える。また助けてくれるのであろうから感謝しなくちゃ、な。名前聞いておけばよかった。

途切れる意識の中、少年が何かを言ったけどよく分からないからまた私が目を覚ましたら教えてよ。流石に私を放置してどこかにいなくなったりはしないでしょう?



状況は最悪、出会いも最悪

(…俺の名前はレッド、俺と勝負したかったらトキワのジムに行ってジムリーダーに俺のところに連れて行って、って頼んだらいい。…………こんな死にそうになって俺のところに来るトレーナー、あんたが初めてだよ。戦ってあげるから……、まずは暖まって。それまで勝負はおあずけ、だよ。

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このあとレッドはポケセンにヒロインを預けてシロガネ山に帰ります。他人に任せて放置します。


2015.01.10

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