年末で仕事の量はいつもの倍。どこの隊もみんな忙しそうに隊内を走り回っている。私もそのうちの1人。三番隊に所属している私は、隊長がいなくて色々な責務に追われている吉良副隊長を案じて隊員全員で一丸となって全力で吉良副隊長のサポートをしている。1人でやる量の仕事じゃないってば本当にあれ!吉良副隊長は憔悴しきっていて今にも倒れてしまいそうだ。

印が押されてある書類はとりあえず各隊に持っていかなくてはならないから、平隊員の私は沢山の書類を持ってあっちこっち駆け回っているわけだ。よくありがちなドジっ子ではないから段差に足を引っ掛けてすっ転んできゃ〜書類が〜!なんてことはしない。そこまで鈍臭くない!



一通り書類を配り終えた私は隊舎へ戻ろうとしていた。辺りはもうすっかりとオレンジ色で、朝からずっと端から端まで走り回っていた私はもうヘトヘトだった。


「じゅ、十三番隊から三番隊……、と、遠いよ……戻るのしんどい…瞬歩使いたい……」


トボトボ歩いている私はぜえぜえ息を切らしながらそうぼやいた。瞬歩を使えばあっという間に隊舎へ帰れるけど生憎私は瞬歩だけてんでダメで…。鬼道は得意中の得意で、剣術は中の下かなって感じ。瞬歩だけは本当の本当にダメで、どうもコツがうまく掴めず短い距離しかできない。ていうか多分十三番隊から三番隊まで瞬歩で移動できるってなると隊長クラスにでもならないと無理なんじゃないのかって思ってきた。

ああ私も瞬歩が使えたらこんな時間をかけずに仕事がもっとスムーズにいったんだろうなあ。ぼんやりそんなことを考えながら、私の足はどんどん重くなって次第には立ち止まってしまった。


「ほ、ほんの少しくらい……仮眠…10分くらい……」


道のど真ん中じゃなく少し広場に出た木のそばにしゃがみこんで目を閉じた。ああ…気が遠のく……。







パシパシと体を叩かれてぼんやりと意識がハッキリする。まだ目は霞むけど誰だろう…ていうか外真っ暗…?あれ、え、え?!真っ暗!!?
ぼんやりしていた意識も完全にハッキリと覚めた。やばい寝すぎた。直感でそう思った。


「目が覚めたか」


あ!そういえばどなただろう私を起こしてくれた方は。そう思って顔を上げると白い隊主羽織。え?顔を確認して私は自分の目を疑った。


「ひやっ、ひ、ひつ、ひひひひひ、日番谷隊長?!!?!」


ななな、何で日番谷隊長が私を?!私は勢いよく立ち上がって身を引いた。いや仕方ない条件反射。いきなり立ち上がった私を見て隊長も一瞬驚いたようだけどすぐ元に戻った。


「夕方頃からここにうずくまってたから気になってな」
「あっ、え、あっ、すみま、すみません…!」
「具合でも悪かったんだろ、仕方ねえ」


う、うわあ。死ぬほど眠かったとか口が裂けても言えない。いや他隊の隊長さんに眠かったんで寝てましたとかそんなこと言えるはずもない。吉良副隊長でも言えないけど。


「あ、あの現在の時刻って…」
「9時だ」


バカーー!私のバカーー!!!!!!え?10分くらい仮眠取るつもりだったのにがっつり寝てんじゃんやばいんじゃないのこれ。え?!5時間くらいがっつり寝ちゃったんだけど。やばいこれは怒られるめっっちゃ怒られるいや吉良副隊長は怒らないだろうけどいやだめだこれ席官さん達に怒られるやばい本当にやばい。


「お前、所属は」
「さ、三番隊です…」
「吉良のとこか。あそこは忙しそうだな…。お前のことは俺から吉良に伝えておいてやる」
「え?!い、いやいやいや日番谷隊長のお手を煩わせるわけには…!」
「気にすんなついでだ」


やっ、優しい…!
日番谷隊長すっごい優しい。こりゃ私の隊の子達もキャーキャー騒ぐわけだ。


「松本に茶でも入れさせるから冷えた体暖めてから戻れ」
「いや大丈夫です!流石にそこまでお手を煩わせるわけにはいかないので大丈夫です!本当に大丈夫です!ありがとうございます!失礼します!」


早口でまくし立てると私は頭を下げてその場を去った。(めっちゃ走った今日一番のスピードで走った)こんな去り方あるかなあ〜次顔合わせるときがあったら本当気まずいなあ申し訳ないやだやだ。でも他隊の平隊員の顔なんてすぐ忘れるに決まってるよね!

怒られるのに怯えながら私は真っ暗な夜道を走って帰った。それにしても、日番谷隊長いい人だなあ。私もファンになっちゃったみたい。へへ



きっかけは年末

(た、ただいま戻りましたー…)
(あ、おかえりnameさん)
(吉良副隊長?!え、あ、あの!すみませんでした本当にあのその)
(いいんだ大丈夫だよ具合悪くて休んでたんだろう?日番谷隊長から連絡があったよ。nameさんが頑張ってくれたおかげでもう今日の仕事は終わったよ)
(え?え?あ、え?)
(それよりもキミが具合悪いことに気付けなくて本当に申し訳ないと思ってるよ、許してくれ…明日はゆっくり休んでいいよ)

怒られはしなかったけど吉良副隊長がすっごいすっごい謝ってきて私が申し訳なかった。にしても日番谷隊長伝達早いなあ。明日おやすみもらえたしお礼、行こうかな。


2014.12.28

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