旅を終えて帰ってきたリンクの様子が何やらおかしいのが分かる。何だか妙に落ち着きがなくて常にソワソワしている。どうしたのだろう。いや、私に何かを求めてるということはとりあえずない。

生きて帰ってこいと言っただけだし、帰ってきたらなんか作ってあげるよとか何も言っていない。うん、言ってない。

リンクとゼルダがスカイロフトに帰ってきてしばらくしたある日。2人が私に伝えてきたことは大地に暮らす、ということだった。

いきなり言われたものだから思考がついていかないのも無理はないだろう。というか、ついていくわけがない。私はそこまでデキた人間ではない。


大好きな2人ともうしばらく会えないとなるととても寂しかったし、泣きたくもなったけれど私が笑顔で見送り出さなくては。

2人が空へ旅立つときに一瞬だけ見えたリンクの顔がいやに寂しそうだったのが気にかかった。


2人が大地に暮らし始めてから幾分か経った。もう数年は経つのではないのだろうか。校長先生に2人の様子を見てこいと言われ、差し入れを持って大地へ行くことにした。久しぶりの大地。何かが変わったのだろうか。とても気になる。

2人がどこに住まいを決めているのかよく分からないからしばらくフィローネを歩いて見て回ることにした。2人がフィローネに住むということはスカイロフトから旅立つときに聞いていた。どうやら、オルディンやラネールと違ってフィローネの方が自然豊かで食べ物もあるし水もたくさんあって暮らしやすい、とのことだった。スカイロフトに比べたら大分生活は不便なんだろうに、そう思ったがあの2人だったらきっと大丈夫であろうと思った。

キュイ達もリンク達のおかげで人間に慣れてくれたのか、多少まだ怯えは感じられるが普通に接していられる。ああ、とても可愛い。森の奥に行ったところで人が住んでると思わしき所を見つけた。中を覗いてみるとゼルダとリンクのものらしきものがたくさんあった。ここら辺にいるのであろうと思い近くを捜索してみると何か柔らかいが硬いものを踏んでしまった。

一体なんだろうと思うと、そこには横たわっているリンクとゼルダがいた。

一体何が起こったのかが私のちっぽけな脳みそでは理解できなかった。今理解できるのが私の大好きな2人が異郷の地で倒れているということだけだった。呼吸を確かめてみたり、脈やらなんやらたしかめてみるけど、人間らしい動き一つしていなくて。こんなところで餓死するわけないと思い2人の体を見てみると胸の辺りを一突きされているのが分かった。

2人の近くをまた捜索してみると忌々しい顔の怪物たちが沢山いた。何なんだこの数は。だけどリンクならこんな雑魚達、どうってことはないんじゃないのだろうか。不意をつかれたのか、それは分からないが今現在わかっているということは大好きな2人が死んでしまったということだ。

リンクが使っていたであろう剣を握りしめ憎い憎い怪物達に斬りかかる。

死ね、死んでしまえばいい

大好きな、私の大好きな人たちを殺したお前らなんか今すぐ死んでしまえばいい。私は我を忘れ一心不乱に剣を振り回し、刺し殺した。

だって、この世でもっと生きなくてはならない人たちが死んでしまうのに、お前達みたいな生きててもなんの意味もないやつは生きてても意味が無いだろ。

しんでしまえよ!

あたりが暗くなる頃、周りにいた大人数の怪物をすべて殺した。返り血を沢山浴びた。汚い。剣を深く地面に突き刺し、膝から崩れ落ちる。空から水が降ってきた。これは雨というものか。天を仰ぎ頬に伝う雨と、また別の雨。

死んでいる2人の顔がやけに暖かいのが胸に突き刺さる。

大昔から女神様に選ばれた2人。
巫女と勇者。


これも、導かれし運命なのかな。


最初から分かってたのかもしれない。

私がどんなに頑張っても、この2人には近付けないということを。

巫女と勇者は二人一緒に終わるしかないと。



分かってたよそれくらい

(最後に見たリンクのあの切なげな表情の意味が知りたいよ。)
(もし私が君に想いを伝えておけばこんな運命変えられたのかな)


2014.12.27

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