「nameー、こっちもお願いできるー?」
「はーい!」


いくらスカイロフトだといえどお金がなくちゃ生きてはいけない。どこかの勇者みたいに木に体当たりしてお金を取ろうとかそんなことはしたくない。まあお金を手にいれるのには手っ取り早い方法なのかもしれないけれども。あの、痛いじゃない。ね?

あとは草刈りとかもあるよね。どこかの勇者は回転切りー!とか言ってすぐに草を刈ってお金を体力に手にいれちゃうけどこっちはそんな剣を持って振り回せるほどの握力なんかあいにく持ち合わせていないし。無理なんです!

だから私はこうしてパンプキンバーまでやってきて朝から夕まで働いているというわけですよ。

お仕事が休みの日にはジャクソンさんのところに行って竹をスパスパ切らせてもらってるし!
一定回数切ってればお金がもらえるあーはっぴー!


そんな詰め込んだ生活をしていて何年が経ったんだろうなあ。


私はベットの中で天井を仰ぎながら思う。こんな生活を何年も続けてしまった私は当然の如く、風邪を引いてしまった。スカイロフトではあまり風邪を引いたりする人いないのに。

数年間、ずっと忙しなく働き続けた私の体はジッとしていられないらしくて気が付くとフラフラな身体で家の外へと出ていた。

外にいた方が治るんじゃないのか、と思った。外の空気がとても気持ち良くて家の中とは大違い。あー、気持ちがいい。

ベンチに座って空を眺めてるとロフトバード達がたくさん飛んでる。いいなあ、私も空を飛びたいよ。ぼんやりそんなことを考えて瞼を閉じるととてつもなく大きい睡魔の波に襲われた。


夢を見た。


勇者が私の手を取って大地を一緒に歩くの。

フィローネに、オルディンに、ラネール…。

いろんなところを案内してくれてる。

次々と襲ってくる怪物達も難なく倒す。

強くて優しい勇者様が私は大好き。

でも、そんな楽しい時間を過ごしていると、いきなり空が真っ暗になったの。

真っ暗になったら地面がいきなり大きく揺れて。

地面から大きい怪物が現れて。

勇者は私をドン、と押して突き放すと大きい怪物に向かって走り出してしまったの。

だめ、だめよリンク!行っちゃダメ!

手を伸ばすのと同時に勇者の身体が宙を舞った。

ボールのように跳ねる身体。

勇者が動かない動かない動かない。

起きて、目を覚まして…!!

ああ、怪物が、こっちに、向かって、ああ、

勇者様、ごめん、ごめんなさい

怪物が手をこちらに向けてきたのと同時に、意識が途切れた


「わ……、っ、は…」


目を覚ますと見慣れた部屋にいることがわかった。

誰だろう、ここまで私を送ってきてくれたのは。


「name、」


ふと、声が聞こえた。部屋を見回すと大好きな大好きな勇者様が。


「リンク!」


音も立てずに歩み寄るリンクは私の目線に合わせ自分の手を私の頬に添えた。

暖かくないよ、暖かくない。


馬鹿、また頑張りすぎてる


一言そう言われると頬にあった手の感触が消えた。部屋を見回すと誰もいない。いない。
ドアの方に目をやると、心配そうにこちらを見てくるゼルダがいる。


「name…最近働きすぎよ。パンプキンバーのオーナーも休んだ方がいいって言ってるわ。少し休んだらどうかしら」


眉を下げながらいうゼルダは暗い私の部屋の電気をつけて特製のスープを持ってきてくれた。

ああ、暖かいな。美味しいな。


「もう頑張らなくていいよ」


ふと、また声が聞こえてきた。
ゼルダではない。きっと、リンクなんじゃないのかな。きっと。

でもね、私はね、リンク、君がいないとどうやらね、気を休めることすらできないのよ。


(私をかばっていなくなってしまったあなたの死に際の顔が頭から離れないの)
(あなたの笑った顔が思い出せないの。あなたの死に際の顔しか浮かばないの)
(他のことで気を紛らわしていないとね、あなたが私の名前を呼ぶの。謝ってくるの)


2014.12.26

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