知ってる?夜中、トイレに行くと…出るんだって!


「幽霊が!!!!」
「うっ、わああああっ!!?」


時計の針が真上にきた頃。ゼルダは僕の部屋にのこのこと入ってきて何を言い出すかと思えばどこからか聞きつけてきた噂話。

そんなのに全く興味のない僕は特に反応を示さないはずだった。なのに、何故こんなに大袈裟な反応をしているかって?僕の部屋は机の電気しかつけてなくてとてつもなく暗い!そして部屋に入ってきたゼルダは物静かな声でボソボソと言い持っていた懐中電灯で自分の顔を照らした!そのときの顔にできる影と言ったらリアルでたまらない!

僕はそんな噂話を信じる暇があるならきちんと勉強をしろと言おうと思ってゼルダの方を向いた瞬間あんな顔が視界にあるんだ。あんな声を出さざるおえないだろ!

それなのに当の本人はやだー、大袈裟よリンクー驚きすぎ!だなんてくすくす笑いながら僕の反応に満足げにしてるし。おかげで眠気が吹っ飛んだよ…。


「で、リンク!出るんだって!」
「それが何?生憎僕には興味ないからねそんなこと…」


ええー!と口を尖らせるゼルダはいかにも確認してこようよと言いたげな顔をしている。絶対にお断りだ、そんなことは。万一、本当に幽霊がいたとしてどうするつもりだ。成仏でもしてもらうのか?僕たちにはどうしようもないじゃないか。


「ほら、早く寝ろよゼルダ。また朝起きれなくなるぞ」


未だに口を尖らせて不服そうな顔をしている幼馴染の背中を軽く叩きながら部屋から出そうとする。
そのときに、ボソッと呟いた言葉が聞こえた。


「………いくじなし、」


は?なに?いくじなし?ん?どの口が言ってるんだ?ん?誰が意気地なしだって?は?怖くなんかなんともないけど?なに?いくじなし?確認しにいかないだけでそんなことを言われなくちゃいけないのか?ん?そんなこと言うなら言ってやろうか?ん?ふざけるな、誰が意気地なしだ!!!


「リンク、声もれてる」


呆れ返った声で我に返った僕は思った。これは彼女の策にハマってしまったと。僕を煽ることで見に行かせようとしたのだろう。うわ、まんまとハマってしまった。バカなんじゃないのか僕は。

きっとゼルダ、いくじなしじゃないのよね?じゃあ見に行ってきて!だなんて言いそうだ。きっと言う。


「いくじなしじゃないのよね?じゃあ見に行ってきて!」


一字一句間違えずに言っちゃったよ……。何だよこれ、何の仕打ちだよ!!



感想よろしく〜だなんて、映画を見て帰ってきて感想を言うだなんてそんなぬるいことじゃないだろ。トイレの幽霊とやらを見に行くのに何でいちいちそんな映画行って帰ってきましたみたいなノリで話しなくちゃならないんだ。

男女兼用のトイレ。男なのか女のかどんな種類の幽霊がいるのか聞いておけば良かったな。


トイレのドアを開けてみた。
中をよくみて見る。
特に何もない。誰もいない。
一応中に入ってみる。
便座に腰をかけてみる。
ふと、顔をあげてみる。
視界に女の子の顔、が…


「「うっ、わあああ!!?」」


何かいた!何かいた!目が大きくて色白で髪の毛が長くて!いた!驚いて立ち上がると目の前にいる幽霊?もビクンと身を震わしふよふよと狭いトイレの中を飛び回る。あ、足がちゃんと透けてる。

平常心を取り戻した僕は幽霊?に声をかけてみた。


「あ、あの…」
「っ!!」


声をかけたら泣きそうな顔をしてカタカタ震えている。ん、何これ、僕ちょっと怖がられてるの?何これ。立場的におかしくないかこれ。


「えと、怖がらなくていいよ…?」


そう声をかけると多少は落ち着いてくれた。これはまともに話ができそうだな。
とりあえず、名前を聞くことからはじめてみよう。


「僕はリンク、君の名前は?」


優しく、声をかけてみた。
どうだこれ、結構いい感じじゃないのか?

すると女の子の表情が柔らかくなり、あんなにビクビクと怯えていた表情からは思い描けないくらいの可愛い笑顔を見せてくれた。


「わたし、nameっていいます!」



その笑顔は反則だから

幽霊のくせに、何でこんなに可愛いんだよ!
あああ、このことゼルダに何て報告したらいいんだろう。

(私を見てくれてのは貴方が初めて!)
(こんな私だけどお友達になりたいな!)


2014.12.26

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