自宅まで歩いている間に少し話をした。
それほど無口って訳ではないようで色々と話すその内容をまとめると、こいつは親元を離れアパートで一人暮らしをしていたらしい。仕送りはなく自分で働いて家賃をまかなっていたが、なぜかバイトをクビになり―多分壊滅的に愛想がわるいからだと思う。それで接客業なんかすんなよ・・・―次のバイトも見つからず家賃が払えなくなったところをさっさと追い出された。ということだそうだ。

まあ・・・不憫だな。


「着いたぞー」

「おじゃまします」


そうこうしているうちに自宅についた。俺の部屋はそんなに狭いわけでもないが広いわけでもない、いたって普通の部屋だ。人が二人入ったところでさして問題はない。

「そこ座ってろ」

「・・・」

「コーヒーとココアがあるけど」
「ココアがいい」

部屋に入ってきたそいつをソファーに座らせて、言われたとおりココアを入れてやる。
何度も言うけど俺様やっさしー!


「ヤケドすんなよ」

「ありがとう」


俺の忠告を守ってそっとココアを飲むそいつを見て気付いた。




そういえば名前を聞いていないな、と。




「なあ、お前・・・名前は?」

「ギュスター」






(・・・ん?)





家まで連れてきてしまったんだから一応名前くらい聞いておかないと悪いだろう。そう思って聞いたのだが、むしろ知らない方が良かったような気がしてきた。
ギュスターってどう見ても男の名前じゃね?いや、いやいやまさか。まさか男を家に連れ込んじまったなんて、そ、そんなことないよな、な?ちなみに例外として後輩のボルトがいるけどあいつ俺のことゴキブリを見るかのような目で見てくるからな。冗談が通じるいい奴なんだけど汚物を扱うような接し方はやめてくれ・・・ちょっと話がそれた。
声もどちらともつかないような中性的な感じだったものだからてっきり女かと思っていたが・・・。とりあえず、確認した方が・・・いい、よな。


「ギュスター・・・お前、」

「なに?」

「・・・っな、なんでもない。」

「そう」

(無理無理無理無理できないできない!)



自分の意気地のなさに少し絶望した。




「名前」

「え?」

「あなたの名前」

「あ、ああ・・・ガルム」

「・・・そう」


無表情で何を言うのかと思えば名前を聞かれた。気付けばこのギュスターって男(?)は会ってから今までずっと表情が変わっていないな・・・何を考えているのか全く分からない、少し不気味に思えた。

その後は気まずい中早々に就寝して、次の朝部屋を見渡したらそいつの姿はなかった。まあさすがにずっといる訳はないだろうと思って放っておいたけど、・・・すぐ再開することになってしまった。





「おー!ボールートー!!カッコイイ先輩の俺様にあいさつは?抱きしめてくれてもいいぜ!」

「わああ!やめて下さい触らないで下さい!!第一格好よくないですし!」

「おいボルト俺を盾にするな」

「なんだよ緑髪触角野郎ボルトと俺様のランデブーを邪魔すんな!」

「俺の平和な生活の方が邪魔されてんだよ黒コゲ金パ!」

「なんだとチビのクセにコラ」

「お黙り!」

「もう、二人が黙ってよ!あと先輩は早くどっかいって下さい!」

「ボルトひどい!」

「プギャーwwwwwm9(^д^)」


・・・といった風に朝は普通に支度をして大学に向かい、ボルトにちょっかいをかけたりといつものように過ごしていた。そして昼、俺は学食に昼飯を食いに行った。そこで・・・そこに、あいつがいた。
同級生と思われる女の子と一緒に飯を食っていた奴はどう見てもギュスターだ。昨日(女と思っていたときに)さんざ観察したから間違えるはずがない。なんでここにいるんだ?行く宛がないとか言ってなかったか?ていうか大学に通ってたのか?色んな疑問が頭の中を渦巻いてもやもやする。


気が付いたら俺はギュスターに向かって歩き出していた。



「なあ、お前」

「!」

「なんで、ここにいるんだ?」

「ガル、」

「どうして、」


「ギュスターさん、あなた。話すことができたのね。」


「え?」



沢山あるどうしてを全部問いただしてやろうと息巻いていたら、ギュスターの横から女の子が話しかけてきた。見た感じすごく高飛車そうだ。

しかしこの子は一体何を言っているのか。
『話すことができたのね』?
ギュスターに言っているんだろうことは分かるけど、どういうことだ?こいつ結構喋る方じゃないか。少なくとも昨日接して俺はそう感じた。





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いきなり話の方向性を見失いました\^p^/



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