ワールド達の話です
「や…やめて、やめてよぉ…ぐす、」
放課後の小学校、その教室の真ん中で、一人の少年を数人が囲んでいる。
べそをかいてうずくまっている彼は、いつも上級生にちょっかいをかけられていた。
「おいこいつまた泣くぞ」
「なんだよ、まるで女子みたいだな!」
「ははは!本当にな」
上級生たちはけたけたと笑い声をあげては少年をからかい、泣き出したのを見ればまた笑う
「お前そんなんだから友達いないんだよ」
「弱虫だもんなぁ?」
「ちが…、ぁあう、うぇ、」
(たすけて、だれか、たすけて!)
少年が心の中でひっそりと助けを呼び続けていると、大きな音をたて扉が開いた。紫の髪を後ろに撫で付けた少年と、冷たい雰囲気の少年が入る。二人は少年とその周りを一瞥するとそこに歩み寄った
「おいワールド、帰んぞ」
「あなた達よく飽きませんね。感心しますよ、そのしつこさには」
そして何食わぬ顔で少年の腕を取った。
「はァ、んだよお前ら」
上級生たちは思わぬ邪魔に不服そうな顔をし、あわよくば喧嘩にでも発展させるつもりらしく少年に食って掛かる。
「ていうかいつも守ってもらって恥ずかしくねぇの?なあ」
「ああ、ワールドくんは女の子だもんなー?ははは」
「くだらね、こいつがナヨナヨしてんのは昔からだから」
「ええ、もう少し頑張ってもらいたいものですね」
「ちょ…ひっく、二人とも、ひどい…ぐす」
軽くあしらった二人が少年の手をひいて教室から出ると、後ろから拙い罵倒が聞こえた。
「ばーか
…だってよ」
「ああも幼稚な罵倒では怒るに怒れませんね」
「…う、あ、あの。」
「何」
「どうしました?ワールド、」
視界が歪む
「あのね、あの、……、…、あり…と…う」
よく聞き取れない、確かに二人の、大切な二人の名前を口にしたはずなのに。二人の名前が分からないことが無性に悲しかった。
「…あ、」
気付いたら教室はなく、帰り道もない暗い部屋の中だった。
小学生だった自分ももういない。夢を見ていたことを自覚する
「…、あのね」
(あのね、とても懐かしい夢を見たよ。)
両手で耳をふさいで、目を閉じて"二人"に話しかける。
(二人の夢を見たよ、すごく大切な…思い出の…?)
どうしてか思い出せない。二人は現実にいたはずで、確かに自分と一緒に過ごしていた。
それなのに全てが曖昧でイメージに靄がかかっているようにぼやけて、はっきりとしない。ただひどく悲しくて心臓がはりさけそうな感覚が断片的に蘇る。
「どうして…?」
(ねえ、二人は…二人はおれの…)
そこで意識が途切れた。
「ッつ!」
(ああ…無理に変わるから)
「…るせ、」
少年は泣きながら髪をかきあげる。それはあの二人の少年の片方にひどく似ていた。
(あまり無理をさせると辛いのはこの子ですよ)
「いいんだよ、アレを思い出させるよりずっといい。…ずっとな」
(そう、ですか…いえ、そう、そうですね。)
「俺達がいなくなっても大丈夫になれば、いいんだけどな。」
(それはそれでとても寂しいですけれどね)
「違いねえ」
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わーくんが三つ子だったら?について考えてたはずなのに訳が分からないことになりました\(^o^)/