昔のあの人







お前ェが好きだった。

ずっと。

嘘じゃねェ。


でも

俺はお前の気持ちを捨てた。


ごめんな…



***




変なモン、見ちまった。
なんなんだよ…この状況…

エースが、煙に、
抱きしめられてて、
キスされてる。
それに対して、エースは
顔を真っ赤に染め、必死に舌を絡ませて、
甘ったるい声を漏らしてて。

は。はは。

見たくない。信じたくない。
嘘だ。オレの見間違いだろ。
そう思った方が、きっと、楽だ。

…何も考えたくない。
考えたら、もう元に戻れない気がしたから。


それなのに


不意に、耳に声が飛び込んできた。

「……ルフィ…か…?」
強張った声がオレの脳内に反響する。

紛れも無い、エースの声。

オレの大好きな、低くて、でも良く通る、エースの声。
その声に引き込まれたかのように
オレは二人の前へ歩を進めた。

オレの姿が見えた途端、二人の間には空間が生まれた。
そして、さっきとは打って変わった二人の表情。

エースに向かって意地の悪そうな笑みを浮かべていた煙の顔は、今は不機嫌そうにオレを見下してる。
煙に向かって蕩けるような表情をしていたエースの顔は、今は青くなってオレと目を合わせようともしない。


ぼそぼそとオレの口からは勝手に独り言が洩れる。
「…は…レは…ただの…邪魔者…かよ……」
「ルフィ…違「何にも違わねぇ…」
エースの台詞を咄嗟に遮る。
「違わねぇんだよ…エース……」

今のエースには煙っていう好きな奴がいて。
今のエースにとってオレは所謂「昔の人」なんだろ?

「ルフィ……」
「…エース……っ…」

涙がぼろぼろ溢れて煉瓦敷きの路地を濡らす。

悔しかった。

ただただ、裏切られたと思い込んで。
ひたすら、悔しかった。


「……モンキー・D・ルフィ…?」
煙が不意に声を投げ付けてきた。
「な、ん…っだよ……っ…く…」
「エースは俺を求めた。だからお前には
割り込んで欲しくねぇんだが?…」

信じられなかった。
エースから、煙を求めたのか…?

「エー…ス……?」

エースはさっとオレから顔を背けた。
それだけで十分だった。
ぼやけてよく見えない風景を
180度回転させ、走り去った。

涙が、止まんねぇ。
なぁ、エース。
…どうして?
…なんで?
……嘘って、言ってくれよ…?

頭から、エースの蕩けた顔が離れない。
髪をぐしゃぐしゃに掻き、顔を叩いても
あの顔が離れない。

「…エース……っ…」

離れないのに、遠くにある。



***



「エース、」
「…なに、スモーカー…」
「……何故泣いてる?」
「え、…」
「…まぁ、いいさ…」



「ごめん……ルフィ…」




end



+++



なんだこりゃ。
ザクザク掘ってみたよこんな化石。
多分半年以上前の文章…を、リメイク。


テーマは乗り換え。

って言っても、表すならば
L→A⇔Sm

…要するに、ルフィは勘違いしてたって事で。
エースと付き合っているんだ、って。

エースが焦っていたのは、恋人云々じゃなく
単純に弟に濡れ場を見られたから。
最初の文は、「兄弟として」です。

スモーカーはただ、濡れ場を邪魔されたから
ちょっぴり苛々してただけ。



この文章の何処が最低かって、
そりゃ私の解説でしょうね。






「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -