もしも1つの願いが叶うなら



誰にだって願いはある。

例えば、普通の奴だって何かを望んで
生きてるはずだろ?

金持ちになりたい。
健康でありたい。
仕事で成功したい。
恋人が欲しい。

…言い方は良いとは言えねェが、
自殺志願だって願いの1つだろ?

そして、俺ら海賊は、
願いの塊みてェなモンだ。

…ワンピースを手に入れるという無謀な野望。
略奪を繰り返し、宝を集め続ける欲望。
優秀な仲間が欲しい、という願望。
何としてでも航海を続ける、という切望。


…俺の野望は、白ひげを海賊王にする事…


でもよ、そんなに大それた事じゃないが
もう1つだけ、願いはある。

…今となっちゃ、随分な願いだけどな。




「相変わらず変わらねェな、ルフィ?」

「エース!…お前ぇ、エースか?!」


…捜してて、それでも
なかなか見つけられなかった。
だから、あの砂漠で弟を見つけた時、
蜃気楼なんじゃねェか、とか
夢なんじゃねェか、とか思っちまった。


でも、それはしっかり実体を持ってた。

久しぶりに腕相撲も出来た。

水を回し飲みできた。



久しぶりに…隣にルフィがいた。

俺が何よりも望んでた事。

…俺の隣で、いつまでもルフィが
笑顔でいれるという事。

いつまでも、は無理かも知れない。


だけど。

隣に居れる時くらいはルフィを
笑顔にしてやれる。



でも

…ルフィも今や3億ベリーの賞金首。

俺だって白ひげ海賊団の二番隊隊長。

…相反してる存在、だからこそ。

ルフィの側に居たいと願う。

再会できただけでも嬉しい。

可愛い弟の顔を見れただけで嬉しい。

ただ「嬉しい」だけ。

何かが欠落したみてェに、嬉しいだけ。

嬉しいので十分なはずだろ?俺…


「エース?…なに変な顔してんだ??」

「あ?え…いや……別に?」

「変なエースだなー」

そう言って楽しそうに笑うルフィの顔を、
何故だか寂しく思った。

ルフィはこんなに楽しそうなのに?


「…なぁ、ルフィ…?」

「ん?なんだ、エース??」

「俺ァ…お前ェにとってどんな存在だ?」

そう聞くと、ルフィは間抜けな顔をしてみせた。

「どうって…かけがえのない兄ちゃん…」

「…だよな。
やっぱ、そんだけだよな?」

そんだけ?
…俺ァ…他に何を期待するんだ?

実の弟に。 


「…?エース、なんで泣いてんだ??」

「……?泣いてなんか…」

ない、と言おうとしたが、引っ込んだ。

…俺の両目から、涙が溢れ、頬を濡らしてる。
勿論、俺に泣いてる、という感覚は無い。

無意識に、泣いてた。

…一体、なにに反応したってんだ?

ルフィは…当たり前の事を言っただけなのに。


「……何か…ワケ分かんねェ…」

「エース…?」


「はは、俺ァ馬鹿だな…オメェに…
何を…求めてたんだか……」

ルフィは弟なんだ。

俺のかけがえの無い…弟。

だから…

愛しちゃいけない。


「エース、…オレもエースの事…愛してっから…
泣かねェでくれよ?



「ルフィ……」




愛しちゃいけない。

でも、愛し合ってる。

お互い…好きになってしまった。



もしも。

ひとつだけ願いが叶うならさ。

俺とルフィを、他人にしてくれ。

愛しているのに血に拒まれる。

血が繋がってるから、素直に愛せない。

だったら、そんな繋がり、いっそいらない。


純粋な恋人同士なら…

どれだけ気が楽なのだろうか?


俺は…俺らは………




<兄>で<弟>だから。





end



+++





…何ヶ月経ったのでしょうか。

リク未消化も甚だしい…!


というワケで900hitリク、エールです;


何だかぐだぐだで明るくなくてスミマセン…

引き際が大切なので…!


nade様、大変遅くなり申し訳ありませんでした;





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