臨死



昔、誰かから聞いたことがある。



死にかけた事のある人には

幽霊が見える、らしい。




だったら、今のオレにだって見えるはず…

でも、今は見えない。


この話は、昔、オレが悪魔の実を食った後に
体験した時のことだ。



***



「はぁ?ユーレイが見えるようになったァ??」


…明らかに馬鹿にしたような顔で
エースがオレを見てた。


─確かまだオレが8歳で、エースが11歳だった。



「あぁ!…なんか、
シャンクスに帽子貰ってからなんだ?」


「ふぅん…んじゃ、帽子
取ってみりゃいーんじゃねェか?」


そう言われて、オレは帽子を取った。



………


「?どした、ルフィ?」

まだ見える…


「…エースの後ろに…何か……」

言った瞬間、エースが跳び跳ねた。


「わー!!皆まで言うなっっ!!!
俺はそういう信じられねェモンは…
大っっっ嫌いだ!!」


……エースはユーレイが駄目らしかった。



「   ぎぃ 」


エースは取り乱していて気付かなかった。


確かに、ドアが開いた。

「?エース??…誰か来たぞ?」

「って……は?…誰もいねェ…ぞ?」



いる。

女の子がいるのに。

部屋の中に

立ってる


「…ルフィ?なに見てんだ?
……そこに何かあんのか??」

「え?…女の子が……」


「…誰もいねェだろ…?」


幽霊?

でも扉を開けた。

すり抜けられなかった。

この子は…ニンゲンじゃないか……?


『ねぇ…』

…?

「どうしたんだ、オメェ?」

「…ルフィ…!喋るな!!」


え?


「だってエース、こいつ」

「ユーレイと喋ると!…取りつかれるって…」


『寂しいの…トモダチになって……』


「別にいいぞ?」

「…っルフィ?!何言ってやがる…」

「だってよぉ?寂しいって…」


『ここ、やだ…
外、行こうよ……』


「?…分かった。」


「ルフィ?!待て、オイ!!!」


エースの静止を振り切って、オレは表に出た。


小高い丘の上。

女の子に連れられて登った。


こっからだとオレの家も見えない。

エースもいない。



『いいの?…お兄さんは…』

「だってオメェが寂しそうだったから

無視すんの悪ィかなって思って。」


『優しいのね…』



そういうと、女の子はニターっと笑って
オレの首を絞め始めた。


「…っげほ………?」

手は、ほどこうとするほどに
オレの首に巻き付いていった。


『行こうよ』

「…行、く、…って……」

『私の世界に来てよ』


わたしの、せかい?


その時、エースの言った事が頭を過った。

─ユーレイと話すと…取り付かれるんだぞ?!



…嫌だ……


「たすっ助けて…エースぅ!!!」

『…無駄よ?…誰にも届かない…』



あ な た は こ こ で



「ルフィっ!!」

「…エース??!」


いる。エースが…助けに来てくれた!


「テメぇ!弟に何してやがる!!」

エースが女の子に蹴りを食らわ…
せなかった。
……すり抜けた?


『…どうして?
………何で邪魔するの…?』

女の子が泣きそうに呟いた。

「離せ!
俺の弟はまだ死んじゃいない!
それに…そいつには夢があるんだ!!
勝手に殺されてたまるかっ!!!」

「…エース…!」

何か、嬉しかった。


『折角出来た友達なの…
絶対に一緒に遊ぶの…!』
一層、女の子の手が首に食い込んだ。

「う…っ……エース…っ…」

「弟から手を離せ!!」

エースが怒鳴った。

オレとケンカしてもこんなに
声を荒げたこと、無かったのに。


「ルフィは殺される為に
テメェに付いていったわけじゃねェ!!
ただ、テメェを哀れに思っただけだ!」

…そう、かも知れない。
泣いてる子を見て…
可哀想だな、そう思っただけ。
だから、付いてきた。

ふ、と首に巻き付いた手が緩んだ。


『…そう、だったの…?』

女の子は、目を潤ませて聞いてきた。

「……」

言えねぇよ…

「ルフィ…?!」

「オメェが泣いてたから…
来たのに…本当のこと、言ったら…
また泣くと思う…から…」
今思えば、殆ど本音をさらけ出してた…。

その一言で女の子は目から涙を溢した。

『やだ…やだよ……
1人はいやなの…!!!』

今度は首を絞めてこなかった。

その代わり、手で顔を被い大泣きしだした。

「おい…ユーレイ!よく聞いとけ!!
…まだ、ルフィはこの世のモンだ。
もしもコイツがさっさと
逝くような事があったら…
その時にはテメェが連れてけ。
だから…」

『…わかった……
あなたの言う通りにするの…』

女の子が口を挟んだけど、エースにゃ聞こえない。

「そっか、分かった。」

「…ルフィ、何て言ってる?」

「…分かったってさ」

「…そうか。
おい、ユーレイ!…分かってくれてあんがとよ。
……成仏…しろよ?」

見えねェ筈の女の子に向かって話しかける
エースを見て、女の子は泣きながら

『…ごめんなさい…ひどいこと、
して…ごめんなさい……』

「泣くなよな?
結局殺されなかったんだし…
オレは怒ってねェから??」

「…まァ、取り敢えず…成仏、しろ?」


『うん…わかったの…』


そう呟いて、女の子は
オレの目にも見えなくなった。


その後、エースにこっぴどく叱られたのは
言うまでも無かったけど…


…………


「…って事があったんだ!」

「へぇ、ルフィに霊感がねぇ…
にわかに信じられねぇが…」

ゾロが呟いた。

「ンだよー!嘘ついても仕方ねーだろ?」

「確かにそうねー。
…誰かさんなら疑うけど?」

「何だよナミ、こっち見んなよ…」

ウソップが顔を被った。



昔話を酒の肴にして、盛り上がってた。

ゾロの親友との決闘の話。

ナミの今まで盗んできた宝の格付け。

ウソップの親父との修行のあれこれ。

サンジの昔乗ってた船での料理修行。

チョッパーのばーちゃんとの暮らし。

ロビンの今居るこの地方に残る伝説話。

フランキーの造ってきた夢の船の話。

ブルックの昔いた海賊団での話。


沢山、たくさん話した。


これらの話はまた違う機会に…




…なぁ、エース?

…ん?ルフィ、どうした?

…あの子は今、どこに居るんだろうな?

…さぁな。俺らの知れた事じゃねェ。

…元気にしてっかな?

…きっと元気だろうよ。


…そっちで泣いてんじゃねぇぞ…?
多分、オレはまだ行かねェけど…
また会ったら、よろしくな?




end



+++



…実はこの話、コピ本の原稿でした…

文にすると長かった…!
漫画だと18頁そこらなのに。



確か、霊感は臨死体験をすると
付いてしまう、というのを
従姉妹に聞きまして。

それで考えたんでした。



途中で霊感の無い筈のエースが
ユーレイと普通に会話してしまって…
ザックリ書き直しました☆…orz


エースとルフィの過去…気になります。
早く書いてくれ尾田っち…!





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