d'amour pour 16 | ナノ






基本的に別人28号状態
ヘタレは標準装備
長文注意の予感…?












なんだか、ここにいてはいけないような気がして、出来うる限りの看病をして、
相馬の意識が戻らないうちに相馬の家を出た。

結局、俺は何も出来ずに、ここにいる。

相馬は、代わりはいやだと、言った。
俺も、相馬を代わりにはしたくない。

これは……?





「……相馬さん、まだ体調悪そうですね」
「!?」

ふ、と意識が現実に戻される。
目の前には小鳥遊が皿を手に、不機嫌そうに立っていた。

「ああ、そう、だな」
「………原因、知ってるんでしょう?」
「……………」
「……俺だって、馬鹿じゃないんですよ?」
「………原因か…」

思い当たる節が多すぎて、どこから口にしていいものか。

「……まあ、主な原因は、俺、だな………」

小鳥遊は何も言わない。
眼鏡の奥の目からは、どこまで知っているかは読み取れない。

「色々、あってな………」

とりあえず、少しだけ、相馬がああなってしまった原因について話をした。
小鳥遊の表情は変わらない。

「―――――まあ、そういうわけだ……」
「……佐藤さん…」
「?」
「……………酷い男ですね」
「……………知ってる」

ホールの喧騒と、小鳥遊の手元の皿の音がやけに響いていた。

「もうさっさと告白なり何なりしてくっ付いて下さい。
……相馬さんも、佐藤さんもこのままだと調子狂いますから」
「言ってくれるね……」
「何とでも。じゃ、俺はホールに出るんで、後お願いします」

小鳥遊の手元にあった布巾を押し付けられる。
これはお前の仕事だろうと、反論しようとすると、目の前で小鳥遊がにっこりと笑う。
一見、普通の笑顔だが、有無を言わさない雰囲気があった。
そのまま無言で残った食器の片づけを進める。

「(告白、か……)」

相馬のことは、もう傷つけたくない。
こんな、不毛な関係じゃなくて、
ちゃんとした、関係に。

「(…………………)」


変わる時は、今なんだ。














「相馬」
「……佐藤君…」

厨房に立つ相馬に背後から声をかけると、何に反応したのか小刻みに肩が震えていた。

「…………今日、時間、あるか?」
「!?」
「…………話したいことが、あるんだ」

相馬は何も言わず頷く。
細い肩は未だに震えていた。

言わなければ、いけない。
自分のためにも、
相馬の、タメにも………









ワグナリアでの仕事が終わり、攫う様に相馬を車に乗せて自分の家へと向かう。
沈黙が、重かった。
相馬は何も言わない。
俺も何も言わない。
今までのように黙って相馬は俺についてきた。


俺の部屋に、相馬と二人。
妙な沈黙を保ったまま、部屋の中に立っている。

「…相馬」

今にも消えそうな雰囲気の相馬に触れようと手をのばす。

「!?」

何か、気配を感じたのかビクリ、と大きく肩を震わせ、過剰な反応を見せる。

「………」

その反応を見て、相馬へと伸ばした手を引き戻した。

「ご、ごめん…佐藤君…」

「す、するんでしょ……?」

「……………シよ……?」

振り返った相馬からはうまく表情が読み取れない。
じっと、何も言わず相馬を見つめる。


「―――――しない」

「しないよ、相馬」

「お前とは、セックスしない」


「―――!?!?」

今迄何の表情も見て取れなかった相馬の目が見開かれた。

「な、なんで………?」

「ねえ!佐藤君!!」

「何で?俺、何か、したぁ…?」

言葉を発するたびに、相馬の目からぼろぼろと涙があふれていた。

「おれが、わるいの…? さとーくん!!」

相馬の叫びは悲痛だった。
お前は、初めから、何も悪くない。

泣きながら俺にすがり付いてくる相馬の細い肩を抱いた。

「お、おれが…おれが…わ、わるっ…」
「相馬!!!」
「………!!」

相馬は泣きながら、俺の服を掴んでいる。
こんな風にコイツはいつも、泣いていたのだろうか。

「違うんだ…」
「ちがう?だって…おれは…」
「違うんだ!!!!」
「!?」

気が付けば、相馬のことを思い切り抱きしめていた。

「違うんだ…代わり、とか、セフレ、とか、そんな関係でお前をもう傷つけたくないんだ…!!」
「!」
「何もかも、煮え切らない俺が、悪いんだけど、さ……」
「さ、さとーくん…?」


「――――――俺さ、ちゃんとお前と向き合うよ」


「ちゃんと、お前の気持ちに、こたえるから」


「いままで、ごめんな……」

腕の中で震える相馬をいっそう強く抱きしめた。

「さ、さとーくん…」

かくり、と相馬の膝が折れ、そのまま二人で床に座り込む。
相馬の目から流れる涙は止まる事がない。
まるで、子供みたいに。

「ごめん、ごめんな。相馬…」

髪をそっと撫でる。
今迄、近くにいたのに、意識して触れたことはない。

「ごめんな…」
「さとう、くん……」

「もう一度、ちゃんと、始めよう?」

「相馬、お前の気持ちを教えてくれ」

「さとーくん…おれ、おれね…
さとーくんのことが、すき、なんだ……
おれの、おれのことだけ、おれだけみてよ……!」

「おれは、いままでも、これからも、さとーくんのこと、すきだから……!」

相馬が、まっすぐ、俺を見つめてくる。


「―――俺も、

―――――俺も、相馬のことが、好きだよ……」


やっと、ここで始めて相馬に対して、一歩踏み出せた。
そんな気がする。

「――――――――ふ、ふぇっ……」
「お、おいっ…そんなに泣くなって…!」
「だ、だって……!!」
「もう、泣くなよ……」

流れ落ちる相馬の涙を拭う。

「今迄、沢山傷つけて、ごめんな…」
「………ホントだよっ…!」
「悪い……ここから、ちゃんと、始めよう?」
「………うん、」

ゆっくりと、相馬の瞼が落ちる。
思いのほか長いまつげが涙で濡れていた。

引き寄せられるように、

俺と相馬はキスをした。





「(今度は、間違わないから………)」





俺にすがり付いてくる相馬が、ただひたすらにいとしかった。













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いやあああああああっふううううううううううう!!!!!!←余韻クラッシャー
後一回くらいで終わります。
オフではこの後エロが入る予定。
サイトでは割愛しますたwwwwwwwww