d'amour pour 15 | ナノ








基本的に別人28号状態
ヘタレは標準装備








相馬の様子がおかしい。
(まあ、前々からおかしいやつだが。)
ダンボールを抱えた細いからだがふらふらと左右に揺れている。

「(いつか、倒れるんじゃないか……?)」

足取り危なく前を歩く相馬に、不安げな視線を送る。


――――そのとき、


ふらり、と相馬の体が斜めに傾いていく。

「おいっ!あぶな…!!」

手にしていたダンボールを慌てて手放し、倒れかける相馬の体を間一髪で抱きとめる。

「おい!相馬!!」

真っ白な顔をした相馬に、すでに意識はなく、腕の中の体は想像以上に軽かった。

「………(具合悪いなら、言えよ…)」

物音に気が付いたのか、裏から慌てたように種島や、小鳥遊がこちらに走りよってくる。
おい、ホールはいいのか。

「すごい音したけど大丈夫ですか!?」
「……相馬さん!?」

俺が抱える相馬の姿を見て、種島が死にそうな声をあげた。
おい、倒れたのはお前じゃないだろう?

「いいから。俺は相馬休ませてくるから、お前らは仕事もどれ」
「で、でも…佐藤さん、相馬さんのこと……」

何かを言いよどむ小鳥遊。
…おそらく、こいつは勘のいいやつだから俺と相馬の間に何かがあったことなんてお見通しなんだろう。
自分自身のことを知らないのは、俺と、相馬くらいだ。

「……別に病人には何もしねーよ……」
「……そうですか」

俺の言葉に小鳥遊の表情が目に見えて穏やかになる。
何だか、複雑な気分だ。

「じゃ、あと頼むわ…」

その場の片づけを二人に任せてとりあえず相馬を休憩室に運ぶ。
抱えあげた体は今にも壊れそうなほど、軽く、傷ついていた。

「(…こんなにしたのは、俺、か…)」

再度、認識させられた。
ぐったりとする相馬をとりあえず椅子に座らせ、机に突っ伏すように上体を倒す。

「(早く、帰らせないと…だめだな)」

相馬の顔色は青を通り越して真っ白だ。
小さく開いた口で浅い呼吸を繰り返している。

「(もう少し、我慢しろよ……?)」

今は、一刻も早く、帰らせないと。
緊急の帰宅許可をもらうために、ひとまず(仕事をしない)店長のところに向かうのだった。















「(そういや、相馬の部屋に入るのは初めてだっけ…)」

相馬の家は知っていた。
カバンから勝手に探した鍵で扉を開ける。
必要最低限のものしかないような、さっぱりとした部屋だった。

まあ、こうやってぼーっと突っ立っているわけにも行かず、勝手に部屋を進み、ベッドに相馬を寝かしつける。
相馬は荒い呼吸を繰り返すだけで目を覚まさない。

「(とりあえず、しょうがないよな…)」

どこに何があるなんて皆目検討付かないのでとりあえず相馬は着てきた服を軽く緩め、そのまま布団をかぶせた。
帰りがけのコンビニで買ってきたものから冷却シートを取り出して相馬の額に貼り付ける。
まあ、こんなものでもないよりはましだろう。

「ん……………」
「相馬……?」

まぶたが振るえ、焦点の定まっていない瞳が現れる。
とりあえず、意識は戻ったみたいだ。

「相馬、わかるか?」
「……………さとーくんが、いる」
「おう、」
「おかしいな……俺の…部屋に………さとーくんが、いるわけ…ない」
「……………」
「夢?夢かなあ……なんか、ふわふわするし…………」

朦朧としているだろうに、相馬はべらべらと話して止まらない。
いい加減、黙らせようと手を伸ばすと

「さとーくん……」
「?」
「あのね………」

相馬は朦朧としたまま、(夢の中にいる)俺に話し始めた。

「すき、なんだ……すき、なの………

さとーくんのこと、すっごい………すきなんだよ………だいすき……

すき………………………………



かわりは、いやだよ



うそなんだ……かわりでいいなんて

かわりは、やだよぉ…………………

すき、すきなの…………
おれ、
おれを、みて…………


おれをみてよ、さとーくん……………」



ぽろり、と涙を一筋流して、そのまま相馬はまた意識を失った。
俺は何も言えず、ぼーっと相馬の涙のあとばかり見ていた。



俺の中に渦巻く、溺れてはいけない、どろどろとした感情。
俺は、確かに、今感じたのだ。

4年前、
轟八千代に対して感じた感情と同じものを。


はたして、これは、恋なのだろうか。


「悪い、相馬………俺には、よくわからないんだ……」

眠る相馬の唇に口付ける。

「でも、俺は、お前のことが、好きなのかも、しれない」







恋と言うには遅く、
愛と言うには早すぎて、










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っうえーーーーーーーいい!!←余韻クラッシャー
もうすぐ、もうすぐおわりますすすすすす!!!!
結構いいとこで終わるかも知れませんが加筆はオフで必ずしますのでえええええええ!!!!!堪忍!!←←