d'amour pour 13 | ナノ








基本的に別人28号状態
ヘタレは標準装備









「なあ、轟」
「なあに、佐藤君」

ある日の休憩中。
たまたま居合わせた轟になんとなく話しかける。
我ながら、こんなにすらすら言葉が出てくるとは思わなかったが…

「なあ、人を好きになるって、どんな感じなんだろうな」
「え……?」
「お前、店長のこと好きだろ…?それで…なんとなく?」

以前だったら、こんなこと表情変えずにいえなかっただろうが、今は眉ひとつ動かさずにすらすらと言葉が出てくる。
不思議なこともあるものだ。
俺は、こいつの…轟の事がすきなのではなかったのだろうか。

「好き…そうね、私は杏子さんのこと好きよ!そうそう、昨日杏子さんたらね……」
「おい、人の質問にはちゃんと答えろ」
「あ、あら…ごめんなさい…」
「でさ…人を好きになるってどんな感じだと思う?」
「…佐藤君は…いま好きな人、いるの?」

轟が開いてるのかいまいちわからない目で俺を見つめてくる。
……本当に俺はどうしてしまったのだろう。
轟の視線を感じても心は平静を保ったままだ。
無に近い心で【人を好きになること】について考えをめぐらせる。

「人を好きになる…って理由とか、切っ掛けとかどうでもいいんじゃないのかしら…?」
「…?」
「いつもその人のことを考えしまって、でも考えるだけで幸せで、何をしても、されてもうれしい。そんなことじゃない…・?
私、馬鹿だからうまくいえないけど…」
「…そんなもんか?」
「そうね。私みたいに尽くすことが幸せな人もいれば、行動や言葉で示してほしい人もいるんじゃない?尽くすだけではいつか終わりが来てしまうもの………」
「………そうか。悪かったな」

がたん、と座っていたパイプ椅子から立ち上がると轟が驚いたように俺のほうを見る。

「俺、休憩終わりだから」
「あ、あら…もうそんな時間…・?」
「ああ、じゃあな。悪かったな、へんなこと聞いて」

そのまま轟の顔を見れないまま休憩室を出た。
人を好きになるということは、難しいことだ。



――――――相馬は、

相馬は、俺に何を求めていたのだろう。



「!?」

無意識に相馬のことを考えていたことに驚いている自分がいる。

俺に、抱いてほしいといったとき、
俺に、暴力的に抱かれているとき、
アイツは…相馬は………

考え始めたら、いてもたってもいられなかった。
早足で、厨房に向かう。



「おい、相馬」

小さくなってしまった背中に声をかける。
今まで静かに作業をしていた手が止まり、ゆっくりと相馬がこちらを向く。

「何、佐藤君……どうかしたの?」

無理やり作った笑顔だった。

「轟さんと、休憩じゃなかったの…?もう少し、一緒にいればよかったのに」
「………………相馬、」
「………?なあに、佐藤君」

相馬の顔にはうっすらと頬骨が浮かんでいた。

「相馬…………


お前、今幸せか…? 」



「!?」

相馬の瞳が驚愕に見開かれる。
しばらく考えるように目を閉じていたが、ゆっくりと目を開く。
そして、そのまま






「勿論、しあわせ、だよ」






美しく、花のように微笑んだのだった。

「!?!?」

同時に、得体の知れない感情が自分の体を駆け巡った。


「(これは、いったい……)」









やっと、始まったのか。

遠くで声が聞こえた。









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準備号とか酷いことになったらサーセンwwwwww
オンラインバージョンはもうすぐ完結です。