d'amour pour 12 | ナノ







基本的に別人28号状態
ヘタレは標準装備













相馬は泣きつかれたのかそのまま事切れたように眠ってしまった。
普段は無理やり起こしてでも相馬の自宅につれて帰っていたのに、何故か今日はそんな気が起きなかった。
静かに眠る相馬の体に残る首と頬の赤い痕だけが、異彩を放つ。
体を隠すシーツをめくりあげる。

「…!!」

現れたのは今まで自分がつけた数々の暴行の痕と、少しの情交の痕。
そしてすっかりやつれてしまった相馬の体だった
もともと細かった体はやつれ、今はあばら骨が浮き上がるほどだ。
不謹慎だが、そんなやつれきった体をとても美しいと思った。
骨を一本一本なぞるように手のひらで撫でる。
相馬はいっこうに目を覚まさない。

「……そう、ま……」

浮き出た骨にキスをひとつ。
青白い相馬の肌に赤い痕が残った。
そのままいくつも残していく。
最後にべろりと浮き出た骨を舐めた。
相馬はぴくり、と一瞬だけ反応を見せたがまったく起きる気配はない。

「……どこで、間違えたんだろうな…」

何もなかったようにシーツを相馬にかけ、自分も眠りについた。
夜はまだ、明けない。






  *






―――――夢を見た。
普段通りのワグナリアの風景。
俺の隣には相馬がいて、胡散臭い笑みを浮かべていた。
相馬のこんな表情を見るのはいつ振りだろうか。
『佐藤君』
そういって笑っていた。
「相馬…」
『―――!!?』
名前を呼べばびくりと震え、表情は一瞬のうちに曇ってしまう。
俺の嫌いな、何かを我慢しているような、そんな顔。
『さ、とう……くん……』
「……………」
『ご、ごめんなさい……』
何も言わないでいればくしゃりと顔をゆがめて泣き出してしまう。
ああ、そういえば…最近は……泣き顔しか、見てないな……
『…っく…ひ…っ…』
相馬は泣き止まない。
白い頬に涙が伝って床に落ちていくのをじっと見ていた。

「泣かせたい、わけじゃないんだ…………」






――――――――そこで、目が覚めた。
カーテンの隙間から朝日が差し込んでくる。

「(……朝、か……)」

起き上がろうとベッドに手を付くとぎしりときしんだ。

「(…相馬、おこさねえと…)おい、そ………」

相馬はいなかった。
確かに、隣に眠っていたはずだった。
相馬がいたはずの場所はもぬけの殻で、しわになったシーツがそこに相馬がいた事実だけを示している。

「くそっ………」

気を落ち着かせようと銜えたタバコはからは何の味もしなかった。





   *






「おはよう、佐藤君」
「…………」

相馬は平然とした顔でワグナリアにいた。
首元にも、頬にも何の痕も残っていない。

「よかったね、今日も轟さんと同じシフトで!」

昨日の狂気さを微塵も感じさせずに笑って話しかけてくる。

「佐藤君、俺補充してくるね」
「…お、おいっ…」

そのまま倉庫に走り去ってしまう。

相馬の気持ちがわからない。
自分の気持ちもわからない。
でも泣いた顔を見たいわけじゃない。
この感情をなんと呼ぼう。

何もかもがわからないまま、俺たちはまた傷ついていく。













――――――――――――
久々すぎてなにがなんだか!!←
連載は計画的に…!
今後の超展開に心しておいてくださいwwwww