d'amour pour 9 | ナノ




相変わらずかわいそうまさん状態。
別人28号状態も継続中。









あの後。
どうやって帰ったのか、思い出せない。
いつものとおり、佐藤君が送ってくれたのか、
自分で帰ったのか。
気づいたら、自分の部屋で朝を迎えていた。
だるい下半身と、体の奥に響く鈍い痛み。
昨日の事が真実であるという証拠だ。

「(昨日、佐藤君は俺のことを”八千代”って、言った)」

「(やっぱり代わりだった。)」

「(俺では、だめなんだ)」

「(俺は、)



(俺は、佐藤君じゃないと、駄目なのに)」





涸れたはずの涙が、一筋、頬を伝った。












「おはよう、佐藤君」
「………おう」

何も変わらない、ワグナリアの風景。
小鳥遊君は相変わらずミニコンで、
種島さんは小さいまま。
伊波さんは…相変わらず小鳥遊君を殴り飛ばして、
山田さんは兄になれとしがみついてくる。
店長もお店の食べ物を勝手に消費しているし、
……チーフの轟さんもその店長にべったりだ。

佐藤君と、
俺だけが、
変わってしまった。

どこで間違ってしまったのか。
もうどうでもいいことだけれど。



「佐藤さん、機嫌悪いですね」
「小鳥遊君…?」

裏で食品補充をする小鳥遊君がぼんやりとつぶやいた。

「っ…そう?あんまり…変わらないんじゃないかな?」
「そうですか?先輩いじりにキレが無いし、それに…
相馬さんのこと、よく殴ります」
「!?…そ、れは結構いつものことじゃないのかなぁ?自分で言うのも何だけど…」
「そうですか…?」

厨房に背を向ける小鳥遊君の表情は俺からはわからない。
彼はその目で何を見ているのだろう。

「最近、相馬さんへの理由の無い暴力が多い気がしますよ?」

ホント、小鳥遊君は見ていないようで、よく見ているなあと感心してしまう。

「それって、どういう………」
「あ、先輩が呼んでるみたいなんでいきますね」
「ちょっと、小鳥遊君!?」

言うだけいって、小鳥遊君は食品補充もそぞろにホールへ出て行ってしまう。
厨房に一人残される。

「おい」
「!?さ、佐藤君……」

休憩上がりだろうか。
突然、背後から佐藤君の声。

「何、やってんだ」
「ちょっと…小鳥遊君と世間話を…」
「…………チッ…」
「い、いたっ……!」

無言で、ふくらはぎのあたりに佐藤君の蹴りが入った。
ああ、小鳥遊君が言っていたのはこのことか。
確かに痛いことは嫌いだけど、この前佐藤君から受けた衝撃のほうが、何倍も、痛い。
佐藤君自身は、何も覚えてはいないみたいだけど………

「………終わった後、家こい」

ああ、またか。

「……………うん、」

にこり、と笑うと佐藤君が反対に険しい顔になっていく。
最近は、いつもこうだ。
佐藤君の暴力的なセックスの後や、
ワグナリアでの直接的な暴力の後。
俺が笑うと、佐藤君は忌々しそうに顔をゆがめ、傷つかない程度に俺を殴る。

「(だめだよ、佐藤君……
女の子にはもっと優しくしないと……壊れちゃうよ…?)」

俺は
代わりでしかない。
でも、
ただ、単純に、
隣にいることを望んではだめなのですか?

「(俺は、壊れたってかまわない。
だって、
俺の、
すきなひと、だから………)」


思いは口には出さず、ただ、壊れた心に蓄積されていくばかり。







―――――――――
さ、佐藤さんがとんだDV男にwwww悪気はないんだ、ぜ?←
あと小鳥遊君が倒せない。

次回からは佐藤さんのターンの予定……は、未定。
ノープラン!!←←←