d'amour pour 8 | ナノ






ちょっとだけエロス注意報。
そして相変わらず別人28号状態継続中。







「一回で、いいから」

そうやって佐藤君に無理やり迫ってセックスをしたのは、一ヶ月前くらいになる。
それから何回か、再びセックスをした。
俺が誘ったのか、
佐藤君が言ったのか、あまり覚えてはいない。
でも、大抵チーフと何かあった日だということだけ覚えている。
そんな日、彼は、とても激しく俺を抱くのだ。
初めては、厨房。
二回目は、更衣室。
三回目は………
記憶もあいまいになるくらい激しいセックス。
種島さんにも、小鳥遊くんにも、あたれない。
行き場のない憤りをもって、俺を抱くのだ。
暴力に発展しないだけ、いいのだろう。
佐藤君は初めてだったあの時以来、
キスをしない、
抱きしめない、
性器に触れない、
名前を、呼ばない。
ただ、俺の中に入れて、繁殖には役に立たない俺の器官に精液を出すだけ。
そんな不毛な関係。
それでも、いい。
必要とされるなら。




「おい、相馬」
「なあに、佐藤君」

普段となんら変わらない、仕事中のこと。
佐藤君が何か暗い面持ちで俺に話しかけてくる。

「(ああ、またか……)」
「今夜、空いてるか」
「………うん、大丈夫……」
「そうか……じゃあ、俺んち、こい…」

一回でいいと、泣き付いたはずだったのに。
今日も俺は佐藤君に抱かれている。
心も、
体も傷つけながら―――――











「う、ぁ――――」

初めてのときから、一回も慣らされる事無く挿入されている。
傷が出来ては治り、出来ては治りの繰り返し。
少しでも痛みを柔らげようと、シーツを握り締めた。

佐藤君の家に来るのは初めてではない。
何回か店で行為にいたっていたが、ある日、店の屋根裏に居候が現れた。
居候―――山田さんが屋根裏で生活を始めたおかげで、俺は今佐藤君の家にいる。
気づかれたくないのは、佐藤君も同じだったようで…
山田さんが来てから、セックスをするのは佐藤君の家になった。
でも、俺はベッドと風呂場くらいしか、佐藤君の家のことは知らない。
家に着けばすぐ、獣のように抱かれてしまう。
セックスが終われば、すぐシャワーを借りて帰る。
その繰り返し。
俺がシャワーを浴びている間も、車で送ってもらう間も、
佐藤君は一切口を利かない。

後悔しているの?
本当は、チーフのことを抱きたいんでしょ?
俺みたいな、固い体じゃなくて、
女の人の、柔らかい体を抱きたいんでしょ?

「ぁ、はっ―――い、く……」
「っ――――――」

今日は珍しく、正面からの挿入だった。
佐藤君の顔や体がよく見える。
抱きつくことは出来ないけれど……

「あ、あ、っ………!!!」
「っ……!」

体内に佐藤君の精液を受け止める。
整わない呼吸の合間、ぼんやりと佐藤君を見つめていた。
顎のラインを伝って汗が流れ落ちてくる。
それを舐めとりたいと思う変態じみた自分に心の中で苦笑する。
ゆっくりと、佐藤君が口を開く。
























「―――――――――っ!!!!!!!!」

ごつ、と佐藤君のむき出しの肩を殴りつけ、ぼろぼろの体に鞭打って、風呂場まで駆け抜けた。
佐藤君が出した精液が太ももを伝っていくが、そんなこと、どうでもいい。
駆け込んだ風呂場のタイルに力なく座り込む。

今、

あの男はなんと言った?




「八千代―――」



そうか、やっぱり自分は代わりでしかなかったのか。

初めて彼が自分を受け入れていれてくれたとき、とてもうれしかった。
たとえ、代わりでも、抱かれるのは、うれしかった。
セックスが目的とはいえ、佐藤君の家に来たとき、純粋にうれしかった。
――――――もしかしたら、このまま、佐藤君も俺のことを好きになってくれるかも知れない。
そんな甘い期待をしてしまうほどに。

現実は、残酷だ。


「もう、耐えられないよ………」

自分から言い出して、自分で傷ついていく。
でも、
好きだから必要とされたい。

喜ぶ体と、
泣き叫ぶ心。

でもなぜだろう。
彼を嫌いにはなれないのだ。




壊れた心がもう一度、
ビキリと音を立てて砕け散った。














―――――――――――
さ、佐藤さんなんて悪い男…!←自分でかいt(ry
これから相馬さんはけなげデレからヤンデレへシフトチェンジします(笑)
い、一応ハピエンになります、たぶん…←