d'amour pour 5 | ナノ






佐藤さん別人28号状態
18禁注意報発令中








「佐藤君、チーフと同じ匂いがするね」
「!!?」
「………ねえ、佐藤君…」
「相馬…」
「なぁに?」

頭の上から佐藤君の苦しそうな声。
自分の頭を押し付けた胸はどくどくと脈打っていた。
佐藤君が、俺のことでかき乱されている。
それが、なぜかうれしかった。

「一回抱けば、満足なのか?」
「!?!?」

期待していなかった答えに驚いて佐藤君の顔を見上げた。
その顔は、悔しさか、嫌悪かわからないけれどゆがんでいて、また泣きそうになった。

「うん、それでいいんだ。そしたら、また明日から普通に接するから……
あ、でも俺の体、気に入ってくれたら………セフレでもいいから傍においてほしいなぁ……」
「……誰にでもいってるのか、そんなこと」
「!? そんなわけないだろ!俺は佐藤君にしかこんなこといわな……ん、う!!」

一瞬、わからなかった。
自分の頬に当たる髪の感触でわれに返った。


――――佐藤君に、キス、されている。


それは、紛れもない事実だ。
今まで触れ合ったことのない距離で佐藤君の顔を見た。
触れた唇は想像したよりもカサついていて、
やわらかかった。

「さ、とうくん………」
「相馬……」
「そんな顔しないでよ。佐藤君は何も悪くない。俺が望んで、それを佐藤君はかなえてくれただけ。
………でもよかったの?俺にキスなんかして…」
「…………してほしそうな顔、してたくせに」
「え?何?」

佐藤君が何か言っていたけどうまく聞き取れずにいると、ふわりと首筋を撫でられた。

「ひうっ…!?」
「…………」
「さ、とうくん………」

佐藤君は何もいわずにゆっくりとした手つきで俺の大してやわらかくもない体を撫でていく。
白衣のごわごわとした感覚と、言い表せない感覚がない交ぜになって体中をかけめげる。

―――佐藤君が、自分に触れている。

普段の他愛無い触れ合いでもなく、明確な意識と欲をもって俺の体に触れている。
もう、それだけでイッてしまいそうになるほどで。
どれだけ自分は佐藤君に飢えていたのかとあきれるくらいだ。

「…ここ?…ここでするの?」
「……………」
「明日、仕事やり難くなってもしらないよ……?」
「……………」
「ね、え…さとうく」
「黙れ」
「……………」

長い前髪で表情はわからない。

「お前は…代わりなんだろう…?」
「!……そうだね…チーフの…轟さんの代わりだよ、俺は……」

そうやって割り切ってしまえばいい。
俺、相馬博臣ではなく、轟八千代を。
長年の片思いの相手をその手に抱いていると、思えばいい。
この何も生み出さない体を、
抱いてくれればいい。


   *



「ん、はぁ………」

眼下で、金が揺らめいている。
押し付けられた冷たい調理台とは逆に、熱さを増していく自分の体。
ぬるりとした感覚に、胸を舐められたのだとわかった。
あれきり、佐藤君は何も話さない。
だから、俺も何も話さない。
ひたすら従順に。

「ぁ………ん、んっ………」

お情け程度に肌蹴られたままだった白衣が肩をすべり落ちた。
同じように乱暴な手つきでサロンが毟り取る様に奪われ、ズボンのウエスト部分に手がかかった。

「……ねえ、」
「…………」
「このままいったら、もうもどれないよ?
何も知らないころにも、今までみたいな関係にも。
俺はそれだってかまわない。
君を一瞬でも手に入れられたんだから。
でも……でも君は……同情なんかで俺を抱きたくないんじゃ、ないの?」
「……お前が、一回だけって言ったんだろ」
「そうだね。でも俺は欲張りだから……また、うまいこといって君を誘うかも知れないよ?」
「…………かまわねえよ」
「え?」
「……………お前を好きにはなれないけど、セフレにくらいにならなってやる」
「……………やっぱりやさしいね、君は」

そのやさしさが俺も、自分も傷つけているなんてわかっていないのだろうけど。











――――――――
今後も別人28号警報と、18禁警報は引き続き発令中。
しかし…厨房でいたすなよ(お前が書いたんだろうが)