がちゃん、
「!?」
静かな厨房に突然、激しい音が響いた。
佐藤君の手元にあったボウルがぐわんぐわんと調理台の上で回っていた。
「悪い……落としただけだ、気にすんな」
「ん、気をつけてね…」
俺の視線に気づいたのか、佐藤君がなんでもないように声をかける。
……本当は、内心イライラしてるの、丸わかりなんだけど…
「今日も、チーフのノロケ、聞いてたの?」
「…まあ、な」
「…大変だね、佐藤君…」
「別に…」
なんで、佐藤君はあんな鈍感で生殺しの塊みたいなチーフを好きになったんだろう。
しかも、四年も片思い。
見返りも何もないのに…
思うだけ、
思って、
悩んで、
傷ついて、
悲しんで…
それなのになんで?
俺なら…
「俺なら、佐藤君を悲しませたりしないのに」
「!!??」
「!?」
思わず出てしまった、言ってはいけない言葉。
「相馬…?」
「え、っと…」
ここで、告げてしまってもいいのだろうか。
彼に、佐藤君に、好きだ、と…
「ねえ、佐藤君…」
「俺が、君の事を好きだと言ったら、どうする?」