かれました


希望好きの白い仔犬に懐かれました。


新世界プログラムより脱出後、皆が見守る中、狛枝クンが覚醒した。
生き残りメンバー全員の喜びの声が響き渡る。
希望に満ち溢れてたその喜びを微笑ましく思いながら、目覚めたばかりの彼に声をかけた。

「おはよう、狛枝クン」
「……苗木、誠クン?」
「そうだよ」
「…なんで…あれ?生きてる…?」

絶望化に逆戻りしていない事に内心ホッとして。
状況が把握出来てない彼に今回のあらましを説明する。
絶望が入り込んでいた事。
皆で未来を選んだ事。
プログラム内で死んでしまった仮死状態のキミ達を生き残りメンバーで救済中な事。
死んだのが遅い、いわゆる仮死期間の短い狛枝クンから目覚め始た事。
他の皆も徐々に目覚めるだろうと言う事。

最後に「おかえり」と声をかけると、無意識にか彼の目に涙が滲んだ気がした。




ーーーそれからと言うものの、狛枝クンには大変懐かれてます。

きぼうきぼうと笑顔で後を付いてくる狛枝クンは正直言って、仔犬みたいでちょっと可愛い。
ネガティブ思考はあるものの問題となる様な狂気も見受けられなくて非常に平和だ。
あのコロシアイ修学旅行中の彼とは別人な姿に心配になって日向クンに確認してみたものの。

「そうか?俺には相変わらずドギツい言葉と狂気を振り撒きまくってるぞ」

念願の希望に出会えてはしゃいでるだけじゃないか?というか、アレを可愛いって思う苗木さんって大物だな。と返された。
ひとまず異常な状態ではないことに安心しつつも、"希望"の日向クンには懐かず今はボク限定に懐いている。


特に現状に不満はないが、問題なのはスキンシップが多いと言う事。
それに尽きる。

突然後ろから抱きついてきたり、
ご飯を食べさせてと強請ってきたり。
友情を超え始めたソレを防ぐために、とうとうお触り禁止令を発令した。

「だっこしたいな」
「ダメ!」
「手をつなぎたい」
「ダメ!」
「ナデナデ!!」
「ダメだよ!…って言うか、それみんな恋人同士のやることでしょ!?」

「狛枝クンは友達なんだから、過剰なスキンシップは禁止!」と伝えると明らかにシュンとしてこっちが悪い気持ちになったけど。
間違ってない、間違ったことなんか言ってない。
こんな一悶着の末、お触り禁止令は可決された。


「そういえば、その腕どうするの?」

絶望のモノなんかいらない、と目覚めた当日に切り落としてしまった腕を指す。
今は袖に隠れて見えないが、何もないことは見るまでもなく明らかだ。

「あはは、左右田クンが"オレが最高の義手(オートメイル)を作ってやるぜ!"って言ってたけど、やけに爽やかで気持ち悪かったから断った!」
「…き、気持ち悪いって」
「でも作ってもらった方が良かったかな?苗木クンをだっこしにくいかもしれないし」

「だっこは禁止!」と返すと、
不幸だ!とふてくされてるが気にしない。
相変わらず狛枝クンに懐かれてるせいで共に過ごす時間は長いが。
お触り禁止令が効いてるのか、
にこにこと大人しくついてくる狛枝クンに満足する。

うん、いい感じだ!


「今日も苗木クンは可愛いね!」
「何言ってるの、今日は昨日の残りの仕事手伝ってもらうんだからね、早く行こうよ!」

今日も平和な一日になりそうだ。



***

研究棟の2階から見える2人の姿につい視線を奪われた。

なにかしら…あれ。
懐柔しているようで、懐柔されているじゃないの。
とてもじゃないけど、私には彼が可愛らしいモノには見えない。
油断させて隙だらけなところをがぶーっと噛みつく、肉食か何かの行動だわ。
苗木君本人は気づいているのかしら。
……絶対に気づいてないわね。

楽しそうだし…まぁ、いっか。
一方方向の友情ごっこに水を指すのも悪い気もするし、あの状態から苗木君を仕留める戦法にも興味がある。

その辺りの幸運ってどっちが勝つのかしらね。



今日も未来の為の残務処理に勤しんだ。




※仔犬の皮をかぶったあいつに気をつけて!


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