われた世界


コロシアイの世界が終わった。
絶望の世界が終わった。
生き残った日向クン達は奇跡的に記憶を保持し、他の皆を救う為に奮闘している。


絶望に触れさせない為に狛枝クンから切り離した、彼女の腕を眺める。
まるでつい先ほどまで生きていたかの様なそれに顔をしかめた。
赤い爪に心を揺さぶられる。

「その腕、どうするつもりかしら?」
「…霧切さん」
「まさか彼と同じ様な事しないわよね」
「しないよ」
「なら、いいけれど」
「…でも」

絶望を嫌いながらも否定することができない。

「狛枝クンの気持ち分かる気がする」

世界は希望で満ち溢れているわけではない。

「ねぇ、狛枝クンは江ノ島さんの事好きだったのかな…?」
「どうかしら」
「狛枝クンとボクはよく似てるよね」
「……似てないわ」
「似てるよ」

求め方が違うだけだ。

あの希望への盲信と同じ分だけ絶望を求めたのだろう。
全ては希望を得る為に。
希望の為の絶望だったのか、それともその逆だったのか。
どちらにせよ取り込まれる程の並々ならぬ想いが生まれてたに違いない。
あの頭脳と彼女の絶望のコンビを想像する。

(……エグい組み合わせだな)

それは、どれだけの絶望を撒き散らした事だろう。
どれだけの希望を手にしたのだろう。
その瞬間、彼女と共にいた狛枝クンは幸福を感じたのだろうか。

「苗木君は時々危ういわね」
「そうかな?」
「そうよ、気がついたら消えてしまいそう」
「消えないよ」

彼女は消えてしまったけど。


彼女の姿を思い描くのは一瞬で。
彼女はずっと絶望という闇の中でさらなる絶望という希望を求めて続けていた。
絶望が求める希望とはどんなものなのかな。
それは甘美な毒の様にふと、ボクを誘う。

堕ちてはいけないと思いながらも、それはいつも口を開いて待ち受けているのが見えて。
もう彼女はいないのに。
それ故にこの宙ぶらりんの想いを持て余す。

(消えてしまったズルいキミの思う通りになんかなってやらない)


「…ボクは絶望には染まらないよ」

消えた今も彼女への呪いに囚われてる。





※希望と絶望、苗木くんと狛枝くん、狛枝くんと江ノ島さん。全ては紙一重。


MAINへ戻る
TOPへ戻る



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -