年アイランド


発端は、絶望の残党だからと言って皆の処分はうなづけなかった事。
その為に未来機関に逆らった。

忘れ形見のアルターエゴの力を借りて例のプログラムで皆を更正する、そんな突拍子もない事も超高校級の皆が集まればわけなかった。
サポーターとして学生役に扮して参加して。
更正だなんてどんなものかと思ったけど、実際に参加してみると、材料を集めたり、モノを作りったり。
共同作業がとっても楽しい。
しかも、全員仲良しでとってもいい感じだ。


問題といえばただ一つ。
お話&おでかけタイムの時間。
何故か、狛枝クンがボクのところにしか来ないということ。

今日も共同作業をやり遂げて、充実感に満たされながら、誰かの希望のカケラの為に中央の島でのんびりする。

誰かに声を掛けられるのを待っているんだけど。
初日から、毎日毎日誰よりも早く狛枝クンに捕まるんだ。
…考えると何となく幻聴も聞こえる気がする。



「ーー!…苗木クーン!」


わあぁっ本物だ…っ!
駆け寄ってくるのは紛れもない、噂の問題児・狛枝クンだ。
片手には"おでかけカード"。
何がしたいかなんて一目瞭然。100%あのイベントだ。

「苗木クン!お出かけしない…?しよう!」

しないよ!!

だって、もう狛枝クンとのお出かけ回数は10回を優に超えている。
これ以上は他の皆との希望のカケラ集めを阻害しちゃうかもしれないし、そもそもお出かけし過ぎだ。らーぶらーぶ度もMAXでこれ以上、上がり様もない。
そろそろご遠慮願いたい。


「狛枝クン…ちゃんと希望のカケラは集めてるの?」
「今集めてるよ、苗木クンとの希望のカケラ!」
「ボクの分は全部集まってるでしょ!?皆の分もちゃんと集めないと…!」
「ええぇ…つまり、苗木クンはボクとおでかけしたくないってこと?…ああ、そうだよね、ボクとなんか一緒にいたって時間の無駄以外の何ものでもないもんね。もういっそ死んで皆の希望の為に貢献し…」
「わあぁぁ!!そんな事ないよ、狛枝クンといるのは楽しいよ!」
「ホント?」
「ホントホント」

危ない危ない、誤解を与えるところだった。
ボクの言葉にちょっぴり嬉しそうに、にこっと笑って。
性格や行動に反して人懐こい笑顔だな、なんて思う。

「でも、希望のカケラ集めないと修学旅行は終わらないんだから。頑張らないと…」
「あはは。こんなゴミ同然なボクが、才能溢れる超高校生級の皆と仲良くなるなんて恐れ多くてできないよ。うっかり幸運なんて起きちゃったら死者出ちゃうかもだし…」
「諦めちゃダメ!」

今回はウサミも居るし万が一なんてないんだ。
「皆と向き合う勇気さえあれば絶対に大丈夫だよ!」と精一杯伝えると、何故か眩しいような目でこっちを見てきた。
あれ。なんかはぁはぁしてるけど大丈夫かな。


「でも今日は苗木クンと海岸に行きたかったのになぁ」
「皆の希望のカケラを集めてからじゃダメなの?」
「ヤダ。あぁ…こんな望みも叶わないなんて絶望しそう」
「ぜ…!?」
「絶望しちゃうかも。あ、しそう!」
「そ…それはダメ!絶望はよくない!」
「じゃあ、絶望しない為にお出かけしよ?苗木クンとお出かけしたら希望で満ち溢れてハッピーになって色んな事、頑張れる気がする!」
「え、う…うん」

勢いに押されて思わず頷いちゃったけれど。
絶望は絶対に駄目なんだ。
皆には希望を持ってもらわないと…!

「ただし、明日は他の人と仲良くすること!」
「善処します!」

良いお返事だけど、せめて"約束"にして欲しい。
問題児との闘いはまた続きそうだった。




狛枝くんのお望み通り海岸に到着して。
泳ぎたいなんて言いはじめて。
希望のカケラもらーぶらーぶ度も関係ない、ただのおでかけイベントが始まった。

「ははっ苗木クンとのデートは楽しいな」
「ええぇ!?これってデートなの!?」
「そうだよ、当たり前だよ!ほらほら、海パン持って来てるから着替えなよ。履かせてあげよっか?それともオイル塗ってあげる方がいい?あ、まず脱がなきゃね!」
「ちょ…っ」
「海ではやる事がいっぱいだよ!早く早く!!」
「無理だよぉぉー!」

こうして1人のせいで確実に希望のカケラ集めが遅れて行く。
そんな毎日が続いた。




修学旅行最終日、留年した皆を尻目に、ウサミに反省会でこってり怒られた。
もはや狛枝くんネックで卒業できないなんて…。

次こそは心を鬼にして希望のカケラを集めさせないと!




※霧切「苗木君、騙されているわよ」


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