影←←不←鬼
影鬼前提不鬼です R15
ふざけた幻想
「うっあ、……あ」
「うるせえよ、ちっとは黙れねえのかよ」
「ふざけるなっ…不動」
上半身を力の入らない両腕で支えながら、真っ直ぐこちらを睨みつける。その真っ赤な瞳を見て、吐き気がした。思わず左足でその頭を蹴り飛ばす。
刹那、整った顔が苦痛で歪むのが見えた。抵抗も出来なかったアイツの身体は数メートル先の壁まで吹き飛んでいった。
壁に激突した衝撃からか咳き込みながら、それでも俺を睨みつける。自分が、自分でも面白い位にイラついているのが分かって、余計に吐き気がした。
「よくもまあそんな格好でこの俺に刃向かおうだなんて。なあ、鬼道クン?」
「くっ…」
VネックのTシャツは胸までたくし上げられ、穿いていたジーパンと下着は膝のあたりで引っかかっている。そして、露わになった秘部にはグロテスクな色をしたバイブが埋め込まれている。
「それより、どうだ?そのバイブ。やっぱり鬼道クンにはゆるかったかな」
影山に比べると、とポツリと呟くと、鬼道の目の色が変わった。嫉妬と殺意と愛情と憎しみとが合わさったような目。辛くて苦しくて助けてもらいたい、そんな目だ。
そういえばコイツは昔っから影山の世話になってたんだっけ。幼い頃から影山の影響を一番に受け、影山も自分の満足のいくように調教してきた。
影山に忠実な狗、影山の最高傑作。
思わず、真・帝国学園での出来事を思い出した。何かにつけて俺と鬼道を比較する影山。二流と呼ばれた俺と、鬼道を自らの最高傑作だと言う影山と、影山の呪縛から逃れたい鬼道。
思い出すだけでイラついてきた。なんであんなヤツがいいんだ…自分の手から逃げ出したヤツが、自分を尊敬し後に恐怖におののき刃向かうヤツが。
俺が妬んでるとも?まさか。俺はただ認められたかった。なのに、なんで…!
「不動…やめろ、こんなことしたって総帥…影山は動かないぞ…」
そんなこと自分がよく知っていた。影山はそんなこと位で動く人間ではない。
何故だ、と呻くように問う鬼道に返す言葉がなかった。理由なんてないからだ。いや、鬼道を痛めつけて、自分の気を晴らそうとしたのかもしれない。それとも、影山が比較するものがいなくなれば、俺を見てもらえると思ったのだろうか。
馬鹿だ。そんな望みなど考えるだけで無駄なのに。影山は自分の最高傑作を取り戻したくて仕方ないだけなのに。
「ふどう、」
真っ直ぐ俺を見つめる赤い瞳。影山を幼い頃から見続けて来たその目。
「っうるさい!!」
ズボンのポケットに入っていた小型のリモコンのつまみを一番上まで上げた。すると、今までうっすら反応していた鬼道が、ビクッと硬直したのが見える。怒りに震える俺を見て、鬼道は恐怖と快感に歪む顔をしたように見えた。
そうだ、もっと怯えろもっと憎め、それでこそ壊しがいがある。…あの人の最高傑作は、俺がこの手で壊す。そうすりゃ、きっとあの人は俺を見てくれる、絶対、絶対…!
「ッア、不動、やめろっ…」
遠くにいたはずの鬼道の手が、俺のズボンの裾を掴んだ。与えられる刺激で動くのも困難な筈なのに、這いつくばって来たのだろうか。
熱で揺らぐ真っ赤な目が、こちらを見る。"冷静な鬼道"なんて誰が言ったのだろうか。こんなにも取り乱す鬼道を見られるのは、きっと俺だけ…。
「るせぇんだよ!お前に俺の何が分かるってんだよ!」
ふざけるな、ふざけるな!!
少なくとも俺より恵まれた運命を辿ってきたやつなんかに俺の気持ちが分かってたまるか。
鬼道は少しばつが悪そうな顔をした。俯いたまま返事をしない。
「お前に俺のことが分かる訳ねえんだよ!偉そうな口叩いてんじゃねえよ!」
「ふどうが…」
俯いたまま、鬼道が声を出した。小さい声。声が震えててよく耳を澄ませないと聞こえない。あの鬼道が、そんな声を出した。
俺は、こんな状況で何を言うか気になったから、大人しく続きを促した。
「…なんだよ」
鬼道は伏せた顔を上げた。その顔は真っ赤で目は潤んでいた。一瞬ドキッとしてしまったが、表では平然と言葉の続きを待った。
「ふどう、が、好きだから…」
一瞬、これまで自分が考えていたことが何だったか忘れてしまった。そして、耳を疑った。鬼道が俺のことを好き?
だから、こんな仕打ちにも耐えてるって?だから、俺を気遣ってるって?
鬼道の顔を見た。そういえば、埋め込んだ熱に侵された鬼道は、時折恍惚の表情を浮かべていたような気がした。
鬼道は俺が、影山を取られて鬼道に嫉妬しているということを知っているのだろうか。
「だから、俺は、お前が心配なんだっ…」
そんなことを言われて俺はどうしたらいいか分からなくなった。鬼道は依然俺を見ている。熱に浮かれたその瞳で、俺を見ている。
俺は、何も言えなくなってその場を飛び出した。
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あっこれ続かないと思うよぉ
影山が好きなあきおちゃんとあきおちゃんが好きな鬼道さん 報われない感情
20100904