まだ空は夕焼けだ

まだというのは少しおかしいかもしれない

この間まではこの時間はもう辺りは真っ暗だった

時の流れは早いな、 なんて自分らしくないことを考えてみた

「青峰まだー?」

目の前にいる青峰に話しかける

「もうちょっとだ もうちょっと」

「…結構 前からそれ言ってるよね?」

「しょうがねぇだろ 終わんねぇものは終わんねぇんだから」

溜め息をつくようにそんなことを言う

(いや 青峰が課題をやらないのが悪いでしょ)
なんて言ったら殴られそうなので言うのはやめておいた


「暑いから早く終わらせてよ」

夕焼けは綺麗だと思う
けどすごく暑い
 
青峰が顔をあげた
パチリと目が合う

そんななんでもないことなのに
胸がドキドキしてしまう



「サボっちまうか」
ニヤリと笑った


「だーめっ!」


舌打ちしてるけれども気にしない

(ほんと暑い…)

ふと鞄の中に某制汗剤があることを思い出す

今日は体育があったため持ってきたのだった

さっそく取り出そうすりと
教室には私達しかいないため
少しの物音でもすごく響いた

少し手に取るとふわっと
爽やかな香りがする

視界に浅黒いものが見えた

「それ 貸せ」


「ん 」


(お揃いの匂いだ、)
少し いや少しどころでは
ないぐらい嬉しかった


「帰るか」


「もう終わったの?」


「あ? 俺をなんだと思ってんだ」


「いやー 一生かかると思ってた」
 

「てめぇ…」

軽くだが殴られた


「っいった!」


「んな 強く殴ってねぇだろうが!」


「女の子の私にとっては痛かったんですー!」


「あぁ? 」


すごく幸せだ
こんなくだらない事でギャーギャー騒いで帰るの

隣で歩いてるとふわふわっと
お揃いの香りがする


(知らない人から見たらカップルに見えるのかな)

そんなことを考えると
顔が暑くなってきた


ちらりと笑っている青峰をみる

(この距離で十分私は幸せ


だから)


ふと歩みを止める

「どうした?」



「ううん なんでもない」


あと 一歩が踏み出せないのです




半袖、肌が触れる距離

∴title by にやり