act.39










屋上へ出るための扉は封鎖されていた。
立ち入り禁止の紙が貼られている。
無理もない、そう思いながら純奈は溜息を吐いた。
自分が階段から落ちたことによって、屋上を開放したままにしておくのは危険だと先生が判断したのだろう。
扉に手をかけて、目を伏せる。
大袈裟かもしれないけれど、唯一の場所を奪われたような、そんな気分になった。
ここにいても仕方ないと思い、おぼつかない足取りで階段を下りていく。

今日は昼休みの一件からいつまでもそのことを気にしていたから、気分転換に屋上に行こうと思っていた。
それがこれだ。
一人きりで気分転換できる場所なんて、もう他に思いつかない。
あのとき、自分が階段から落ちたりしなければ、屋上は開放されたままだったのかな。そんなことを考えてしまう。

一人で校内を歩いていると、自然と今日の出来事を思い出してしまった。
思い出したくもないのにこういうときだけは次から次へと鮮明に記憶が蘇る。
その上、赤司先輩と不自然な別れ方をしてしまったから、さらに気が重くなった。
こんな笑えない悪戯の標的になるような立場になってしまうほど、私は何かしてしまったのだろうか。
見当もつかない。
そして、そんな人物だと周囲に認識されていると考えるだけで吐き気がする。
こういうときはこうして一人で考え込まずに誰かに話を聞いてもらえば楽になるのだろうか。
赤司先輩と黒子先輩、二人の顔が浮かんだけれど、さすがに今回のことは簡単に話せそうになかった。






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