act.37










家に帰ってから、すぐに机と向き合ってはみたものの、とても勉強に身が入りそうにない。
何から手をつけていいものか迷ってしまい、なかなか教科書を開けなかった。
しかし、何が分からないのか分からないなんて率直な思いを赤司先輩にぶつけることはさすがに躊躇われた。
せっかく赤司先輩が勉強を見てくれるのだ。
自分でできる範囲のことで余計な時間を割くようなことはできない。
頭の中で葛藤を繰り広げながら、教科書を開いて必死に紙面に目を走らせる。

赤司先輩の期待に応えられなかったときのことを考えると息が詰まった。
試験を受ける前から考えることではないと分かってはいるけれど、思考を止められない。
ただ、赤司先輩の安心した顔を見たかった。
これまでの自分のことを思い出すと、気疲れするような場面も多くあっただろう。
なんだかんだで落ち着けた瞬間なんて、よくても数える程度しかなかったはずだ。
それでも嫌な思いを表面に出さない赤司先輩の優しさを思うと、自分が何もしないでいることはできなかった。
そして同時に、あの赤司先輩にここまで気を回させている自分が何を考えているのか自分でも理解できなくて、それが少しだけ怖い。

とても勉強に集中できる状況ではなかったけれど、赤司先輩と黒子先輩のことを思い出すと自然と教科書に目線が落ちた。
ぼんやりと目で文字を追っていく。
帰りに赤司先輩から言われた通り、試験範囲を確認してその日は適当に切り上げた。

以前とは比べものにならないほど憂鬱な気持ちで明日を迎えなくて済むようになったと思う。
何もかも赤司先輩と黒子先輩のおかげだ。











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