act.33










「…失礼しました」



純奈は力ない声で一礼してから、静かに職員室の戸を閉めた。
戸が閉まったと同時に大きい溜息を吐く。
片手に複数の科目の教科書を持ったまま、人通りの少ない廊下を歩いていった。


教室にいると、どうしても周囲の声や視線が気になってしまい、居心地が悪くて仕方ない。
だから、入院している間に進んだ授業について質問しようと職員室まで来ていたのだ。
授業のことは滞りなく質問できたけれど、それから追い討ちをかけるように生活指導の先生から注意を受けた。
自分の不注意による階段からの転落という顛末になっていることを知っていたからこそ平静を保てたものの、やるせない。
歪んだ解釈を事実として認識されている現実を改めて知らしめられたような気がして、何も反論できなかった。
する気さえ失ってしまった。
事情を知っている他の先生からは労いの言葉をかけてもらえたけれど、それが救いになるはずもない。

ただでさえ、来週には学力試験を控えている。
このまま遅れを取り戻せないまま試験に臨んだりしたら、補修は免れないだろう。
正直、もう補修になってしまってもいいのではないかと思ってしまった。
それでも気持ちを割り切ることができないのは、赤司先輩と黒子先輩がいるからだ。
部活にちゃんと出ると約束した途端にそれを破るようなことは、できればしたくない。











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テーマ「人外ファンタジー」
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