赤司先輩に捕まると本気で思ったのか、紫原先輩はそそくさと帰っていってしまった。
その場に取り残されて、何気なく赤司先輩に目を向ける。
すると、目が合ってふと笑われた。
「…考えたが、紫原がいたら勉強に身が入らないかもしれないな」
「え?」
「傍で何かを食べられていたら集中できないだろう」
「あ…そ、そっか…そうかもしれないですね」
その光景を想像したのか、呆れた笑みを口元に浮かべている。
それにつられて笑ってしまった。
「…大分時間が経ったな。そろそろ行くぞ」
「……」
「純奈?」
「あ、はい…行きましょう」
赤司先輩の教え方は難しいけれど分かりやすくて、そのおかげで昨日の夜までは解けなかった問題を解くことができた。
シャーペンの芯がぎこちなくも止まらずに紙面を走る。
これまでは教科書を問題を見るだけで頭痛が起こりそうだったけれど、今はそんな気がしない。
目に見える自分の変化に、少しだけ感動してしまった。
対面して座っている赤司先輩は、頬杖をつきながら本を読んでいる。
きっと何もしなくても大丈夫なんだろうな、そんなことを思いながら問題集のページを捲った。
しばらく解いていると、分からない問題に当たってそろそろと赤司先輩に目を向ける。
「赤司先輩、この問題…」
「…ああ、それはさっき教えた問題の発展問題だね」
→