意識して見てみるけれど、赤司先輩はいつもと変わらない穏やかな表情で受け答えをしている。
その姿からは、とても困っているようには見えなかった。
もう一度だけ紫原先輩を見上げて呟く。



「…困ってないと思います」

「そっかな〜…ちょっと呼んでみよっか」

「え…ダメですよ、何か話してるのに…」

「赤ちーん」



私の制止を無視して、紫原先輩が赤司先輩に声をかけながら手を振る。
すると、話していた二人がほぼ同時に顔を向けてきた。
赤司先輩が一瞬だけ目を丸くして、女子生徒に何かを告げるとこちらにまっすぐに向かってくる。



「二人で何をしているんだ」

「そこで会っただけー」

「そうなのか」

「ごめんなさい、話の邪魔して…」

「そろそろ切り上げようと思っていたから別に構わないよ」



赤司先輩に横目で見られる。
本当はどう思っているのか、その表情からは何もつかめない。
会話が詰まりそうになったとき、紫原先輩が思い出したかのように口を開いた。



「あ、そーだ。勉強するんだってー?」

「…純奈から聞いたのか。ああ、そうだよ」

「優しいんだね〜」

「…紫原も参加するか?」

「え、まさかー。冗談っしょ」

「冗談なんて言わないよ」

「…今日はもう帰るし。また明日ー」

「そうか、残念だね」






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