「はい、あの…学力試験があるから…」

「はあ〜…真面目なんだね〜」

「ち、違いますよ、全然真面目じゃないです」

「嘘。放課後に残って勉強とか普通しないっしょー」

「…赤司先輩が今度の試験の勉強、手伝うって言ってくれたから…だから、今日は一緒にやるんです」

「…赤ちん?」



私の口から赤司先輩の名前が出てきたことがよほど意外だったのか、珍しく紫原先輩は目を丸くする。
話していいものかと思いながらも、ここで黙るわけにもいかずに話を続けた。



「はい…ええと、学力試験が不安って話をしたんです。そうしたら…」

「…ふーん…不思議だね。赤ちんがそんなこと言うなんてさー」

「は、はい…不思議、ですね」

「あ、純奈ちんもそう思ってたんだー」

「も、もちろんです…だけど、赤司先輩…優しいですよね」

「…そだね。で、赤ちんは純奈ちんのこと手伝ってあげるみたいだけどー…純奈ちんは赤ちんのこと、助けてあげないの?」

「え…助ける?」



紫原先輩の言葉の意味が分からなかった。
私が赤司先輩を助けられるようなことなんて、何一つとして思い浮かばない。
返事ができずに戸惑っていると、紫原先輩に軽く手招きをされた。
そして、促されるままに廊下の角から自分が引き返してきた方向を覗き込む。
赤司先輩はまだ先程の女子生徒と話しているようだ。
それでも何が言いたかったのか見当もつかず、隣に立っている紫原先輩を見上げた。



「…紫原先輩…わ、分からないです」

「えー。ちょっと困ってるっぽくない?」

「…困ってるんですか…?」






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