窘められてしまうほど焦っている姿を晒してしまい、途端に恥ずかしくなってきた。
肩を落として、体育館から出ていこうと赤司先輩に背を向ける。
すると、後ろから声が飛んできた。



「どこに行くんだ?」

「…え?ええと…その辺で待ってようかと思ってたんですけど…」

「それならここで待っていてもいいだろう」

「え…」

「…少しでも目を離すと、純奈はどうなるか分からないからね」

「…はい」



優しい言葉をかけてくれて純粋に嬉しかったけれど、以前の階段から落ちた件を思い出して、返事の声も自然と小さくなる。
赤司先輩が近くにいれば安心だ。
そんな考えから、素直に頷いた。

赤司先輩の言葉に引き戻されるように、体育館の隅に重ねて置かれているマットに座り込む。

つくづく自分が情けなくなった。
普通の人ならば、どちらつかずの逃げ腰な私の態度に少なからず苛立ちを募らせることは間違いないだろう。
人の目や反応を気にするあまり、不自然な態度になってしまっているのは自分でも十分すぎるほどに分かっている。
もともとそういう性格だったとしても、ここまで酷くはなかったはずだ。
こんな風になってしまったことには、それなりの過程があり、理由がある。
いつも思うけれど、赤司先輩はこんな私といて、少しも嫌だと思わないのだろうか。今まで嫌だと思ったことはないのだろうか。
気になるけれど、とても聞けそうにない。

マットの上で膝を抱えて、少し離れた場所で練習をしている赤司先輩を見つめた。
ボールを自由自在に扱っている姿を見ていると、才能に満ち溢れている人なんだなと改めて思わされる。
バスケだけではなく、他にも突出した才能を持ち合わせているのだから。
これは赤司先輩に限った話ではない。
黄瀬先輩や青峰先輩、キセキの先輩に関しては例外なくそうだ。

本当にすごい人だな、なんて呑気な気持ちで眺めていると、急に赤司先輩と目が合った。
反射的に背筋が伸びる。






×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -