「何か話があるなら、今はちょうどいいと思いますよ」

「はい…ちょっと話したいことがあったから、行ってみようかな…」

「…間宮さん。何かありましたか?」

「え?えっと、何かって…?」

「いえ、何もなかったらいいんですが…突然変なことを言って、すみません」



ふっと安心したような笑みを浮かべた。
黒子先輩の意味深な言葉に、どきりと心臓が跳ね上がる。
まさか、黒子先輩の耳に届くほど広がっているのだろうか。だとしたら早すぎる。
誰の耳に届くにしても、他人から自分についての情報が回ることには不安しか感じられない。



「…引き止めてしまいましたね。僕はもう帰るので、先に失礼します」

「は、はい、また明日…」

「はい」



最後まで淡々と丁寧に挨拶をして、黒子先輩は行ってしまった。

結局、黒子先輩の言葉の真意はつかめないままだった。
黒子先輩とのやりとりの一部始終を思い出して、やはり知っているのではないかという気持ちが強まる。
もしもそうだとしたら、私が気にすることを案じてくれているとしか考えられない。
しかし、それもただの思い込みだと考えを打ち消す。

先輩たちに気を遣わせたくなければ、私の方から歩み寄って、どんなことでも話しておいた方がいい。
話せなくなるような状況になってしまってからでは、本当におしまいなのだから。





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