一瞬だけ目を向けられて、すぐに逸らされる。
赤司先輩を怒らせていないか気になったけれど、話している様子から気分を害しているようではなかった。

二人と会ってから、それまでずっと悶々と考え込んでいた暗い気持ちがどこかへ行ってしまったような気がする。
それから、何気ない会話をしながら三人で体育館の方に向かっていると、ふいに紫原先輩からの視線を感じた。
顔を上げて、目を合わせるけれど何も言い出してこない。
お互いが無言で見つめ合う状況が生まれてしまい、気まずい沈黙が流れる。
異様な空気に気付いたのか、まるでそれに便乗するかのように赤司先輩も無言でこちらに視線を向けてきた。
存在感のある二人の視線を一身に受けて、堪えられず口を開く。



「…紫原先輩、何か…?」

「え〜?あ〜…聞きたいことあったけど、やっぱいいかなって思って」

「……」



そんな風に言われると気になってしまう。
そう思いはしたけれど、しつこく問いただすこともできなかった。
第一、紫原先輩と今こうして何事もなかったかのように会話ができているのも、元を辿れば赤司先輩のおかげなのだ。
赤司先輩がいなければ、紫原先輩と会話なんてできるような心境ではなかったと思う。






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