気分が優れないあまり、なかなか更衣室に辿り着かない。
部活が始まる時間に差し掛かっていると分かっていながら急ぐことができなかった。
途方に暮れたように、床を見つめながら歩いていると、ふと声が聞こえてくる。



「純奈じゃないか」

「…純奈ちん?」



赤司先輩の声だった。
気のせいか、紫原先輩の声も遅れて聞こえてきたような気がする。
入院していたときも今と同じようなことがあったけれど、ふとしたときに赤司先輩の声が聞こえてきていた。
二人の声にゆっくりと顔を上げると、赤司先輩と紫原先輩が視界に映る。



「赤司先輩と、紫原先輩…」

「本当によく会うね」

「は、はい…そうですね」

「久々に見たけど元気そうじゃん」

「そうですか…?」

「うん。そういや、お見舞いに行ったときも会えなかったんだっけー」



内心、突然のことに戸惑いながらも平静を装って相槌を打つ。
紫原先輩とこうして話をするのは本当に久しぶりだった。
キセキの先輩たちと余計に気まずい関係になってしまった原因であるお見舞いのときも、あの場にいなかったのがこの二人なのだ。
たったそれだけのことで、幾分か話しやすさを感じてしまう。
向こうも久しぶりに話したからか、普段以上に関心のある様子で話しかけてくれた。






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