今日も昼休みまで特に何事もなく過ごせた。
美里香のことが気になって、何度か横目で見てしまったけれど、その視線が重なることもなかった。
とにかく、クラスメイトに空気のように扱われることさえ、自分を中心とした大きな揉め事さえ起こらなければ構わないと考えてしまう始末だ。
本当に現状問題を解決させる気があるのか、ときどき自分自身に問いたくなってしまう。
鞄を持って、賑やかな教室からそろそろと出ていった。
なぜか今日はいつもと違った賑やかさを感じる。
クラスで何があろうと自分には関係ないことなんだ、気にしたらいけない、そう言い聞かせながら教室の戸を閉めた。
購買部で昼食を買ってから、赤司先輩と約束した空き教室に行こうと階段を下りていく。
そのとき、廊下の途中で赤司先輩の姿を見付けた。
すぐさま辺りを見回して、安全を確認してから赤司先輩に声をかける。
「赤司先輩」
「…純奈?」
「あ、あの…ごめんなさい。今日は起きたのが遅くて、昨日の時間に間に合わなくて…」
「ああ、きっとそうだろうと思ったよ」
まるで最初から分かっていたかのようにふっと笑われて、何も言えなくなってしまう。
今朝のことは少し気になっていたから、早めに赤司先輩に話せてよかったとほっとした。
「今朝、青峰先輩に会ったんですけど…声かけてきてくれたから、ちょっとだけびっくりしました」
「青峰が?」
「はい…あ、挨拶したらすぐに行っちゃったんですけど…」
「…もしかすると」
「…なんですか?」
「純奈が思っているほど、青峰はこのことに関して深く考えていないんじゃないかな」
「え?ど、どうしてですか?」
「…ただの推測だが、単に青峰はそういうことに自ら首を突っ込んで囃し立てるような性格ではなさそうだからかな」
「そう、ですか…」
「…そんな顔をするな。何度も言うが、僕の言ったことはただの推測だよ」
「……」
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