翌日、大きな溜息を吐いて家を出ていく。
昨晩は勉強のことばかり考えていて、赤司先輩が登校するくらいの時間に家を出ようと思っていたことをすっかり忘れてしまっていた。
昨日の今日なのに、なんて朝から自己嫌悪に陥りながら通学路を歩いていく。
昨日ほど早い時間帯ではなかったため、通学路には多くの人が行き交っていた。
まさかとは思ったけれど、美里香や先輩たちが近くにいないかつい気にしてしまう。
しかし、向こうが自分を見かけたところで声をかけようと思ったりはしないはずだ。
それでも顔を合わせてしまうことは気まずくて、できることならば自分が先に相手を見付けて自分から距離をとりたい。
「よお」
「……」
「おい、朝から無視か」
「…え?」
背後から聞こえてきた声が自分を呼びかけていたとは思いもしなかったから、あえて反応を示すこともなかった。
そろそろと振り返ると青峰先輩が眠そうな目でこちらを見ている。
朝から思いがけないことが起きて、あからさまに動揺してしまった。
しかし、声をかけられていながら無視することもできなくて小さく頭を下げる。
「おはようございます…」
「ああ…んじゃ、学校行って一眠りしないといけねーからまたな」
わけの分からないことを眠気眼で言い放ち、青峰先輩は手をひらひらと振って先に歩いていってしまった。
呆然とその背中を見つめる。
どうして声をかけてきたんだろう。
今の思いはその一言に尽きた。
青峰先輩の行動の意図が全くつかめない。
ただ気が向いただけだろうと自分の中で勝手に答えを出して、気を取り直し、自分も学校に向かっていった。
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