そうしている間に待合室を通り抜けて、さらにエントランスを抜けて病院の入口の前まで来ていた。
別れを惜しむ時間さえ十分にないまま、名残惜しい気持ちを抱えつつ、春日さんに目を向ける。
目が合うと、春日さんに微笑みかけられた。



「これからは怪我して入院なんてことにならないように、気を付けるんだよ」

「…はい、気を付けます」

「…きっと、嫌になることだけじゃないと思うから…元気出してね」

「え…?」

「あ、もしかして迎えの車ってあれじゃない?」



春日さんの言葉に一瞬だけ固まってしまった。
しかし、つられるようにすぐに春日さんの見つめる先に視線を移す。
そこには見覚えのある車が止まっていた。
多分あの車です、と呟くと春日さんに笑いかけられる。



「じゃあ、ここでね」

「…春日さん、ありがとうございました」

「ううん、気にしないで」

「それじゃ…さよなら」

「じゃあね、純奈ちゃん」



別れ際、春日さんが手を振ってくれた。
それに返すように、小さく頭を下げてから車の方に向かっていく。


もしかすると、春日さんは私が辛いと思っていることを大分前から知っていたのかもしれない。
これまで幾度となく心配をかけないようにと意識して振る舞っていたつもりだったけれど、それでも気付かれてしまったのだろう。
だからこそ、ずっと傍にいてくれたのかもしれない。
最後にあんなことを言った理由も、それなら納得がいく。

嫌なことだけじゃない、かな…。
















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