「このままじゃ、純奈も話しかけにくくなっちまうと思うし」

「…確かに、そうかも」

「お前って意外と細かいところ気にするよな」

「別に細かくなんかないっス。どちらかといえば、考えんのって苦手だし…ていうか、青峰っちは本当にちっとも気にしてないんスね」

「…気にしてないっつーか…ああいうのって、普通なんじゃねーの?」

「普通?」

「純奈から言われるとは思わなかったけどよ。さつきからあんなこと言われるのはよくあるし」

「ちょ、ちょっと、それ本気で言ってないっスよね」



とんでもない発言に、思わず真顔で聞き返してしまった。
しかし、青峰は特になんとも思っていないのか欠伸をしている。

本当に気にしていないというのか。
今まで青峰が深刻そうに見えたのは、ただの自分の錯覚だったとでもいうのか。
そうだとしたら、あまりにも図太い神経を持っている。
ものぐさな青峰とはいえ、さすがに何も考えていないとはどうしても思えなかった。
そのとき、はっと思い出したように口元に手を当てる。



「わ、分かった…きっと、桃っちにキツイこと言われすぎて感覚が麻痺ってるんスよ!」

「なんだそりゃ」

「…はあ…まあ、青峰っちに気遣ってもらえたのは貴重な体験だったかな」

「何言ってんだ、お前がいつまでもしけた顔してるからだろ。鬱陶しくて仕方ねえ」



呆れたように顔を背ける。
それから立ち上がって、何を言うこともなく青峰はどこかへ歩いていってしまった。
自分の練習に戻るのか、はたまた帰ってしまうのか聞きそびれてしまったことを遠くに行ってから思い出す。
さすがに今日は部活が終わるまでいるかもしれない。

それにしても、青峰と話したことによって心のもやが少し晴れたような気がした。
きっと気にかけてくれたのだろうと思い、黄瀬は自分の情けなさを叱咤するように両頬を思い切り叩く。
青峰なりの気遣いに感謝して、黄瀬も自分の練習に戻っていった。
















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