「やっぱ、青峰っちにはまだ敵わないっスね…あとちょっとなんだけどな…」

「はっ、何があとちょっとだ」



しばらく一対一をして、あちらこちらを走り回って二人の息は完全に上がっていた。
二人並んで壁際に座り込む。
ドリンクとタオルがほしくて仕方ない。

そのとき、給水器が目に入ってきて青峰も同じようなことを思ったのだろう、黄瀬は横腹を軽くどつかれる。
何を言いたいのかは分かったけれど、このまま好き勝手に使われることにも釈然としなくて、軽く睨んで嫌だと主張した。
しかし、とんでもない形相で睨みつけられてしまい、思わず固まってしまう。
これは絶対に動いてもらえないパターンだ。
それを即座に感じ取った黄瀬は泣く泣く立ち上がり、給水器が置かれている場所に向かっていった。



「お、サンキュー」

「…ほんと、いい性格してるっスね」



ドリンクが入った紙コップとタオルを両手に持って、青峰のいる方へ戻っていく。
先程の目付きとは打って変わった満面の笑顔で、青峰は黄瀬から紙コップを受け取った。
いつものことだけど、本当に横暴だ。
ついそんなことを思ってしまう。
けれど、バスケ部のレギュラーの中でも後々に仲間入りしたということもあって、反抗する気にはとてもなれなかった。
それに、青峰がこんな態度であることはもう全員が分かりきっている。

ドリンクを飲みながら、黄瀬は青峰の隣に腰を下ろした。



「あ、タオル…はいっス」

「おう。マネージャーみてえだな」

「え、そうっスか?」

「なんか気持ちわりい」

「…青峰っちから言い出しておいて何なんスか。そんなら自分で取ってきてほしいっス」

「あー悪い悪い」



おそらく、今のは冗談だろう。
しかし、何がおかしいのか笑っている青峰を理解できないまま、黄瀬はようやく一息ついた。
体育館内を見回す。
青峰はタオルで汗を拭ってから、黄瀬の様子を窺うようにちらりと視線を向けた。






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