「桃井先輩…」

「純奈ちゃん、おはよう…学校で会うのは久々だね」



桃井先輩に静かな微笑みを向けられる。
けれど、それもどこかぎこちないものだった。
考えるまでもなく、最後に会ったときのことを気にしているのだろう。
そんな桃井先輩の様子を察した途端に、大きな責任を感じてしまい、黙っていることさえ申し訳なくて声をかけた。



「…桃井先輩、ごめんなさい…」

「え…?」

「あ…ええと…前は、変なこと…言って…」

「あ…う、ううん、大丈夫だよ!そんなに気にしてないから…純奈ちゃんも気にしないで」



そんなことを言っても、気にしていないなんて嘘だ。
そして、気にしないでと言われた矢先に瞬時に気持ちを切り替えられるはずがない。

何を話せばいいか分からないまま声をかけてしまったため、純奈は言葉に詰まってしまう。
しかし、どうにか会話を続けなければと必死に話を続けた。



「あの…今日、また備品の用意させてもらいたいんですけど…」

「え、どうして?」

「コートの方にいても、きっと…あんまり動けないから、みんなに迷惑かけるだけだと思うので…」

「あ、そっか…退院したばっかりなんだもんね…大丈夫だよ」

「…ありがとうございます」

「足は平気?」

「た、多分もう大丈夫です」

「そっか…何かあったら言ってね」

「…はい。じゃあ、先に行ってますね」

「うん」



話せば話すだけ罪悪感が増していく。
本当は優しい先輩なのに、こんなぎこちない空気にしてしまい、挙句の果てに気を遣わせるようなことになってしまうなんて。
重い空気に圧迫されるような息苦しさを感じる。
それから逃げるように、桃井先輩に背を向けて更衣室のドアノブに手をかけた。
















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