「足は、あまり問題なさそうだな」
「すぐに激しい運動はできないかもしれないんですけど、部活には出られるから…大丈夫だと思います」
「それならいいんだが」
赤司先輩とは以前に比べると、いくらか肩の力を抜いて話せるようになったと思う。
ここまで緊張せずに普通に会話ができるようになるなんて、あまり話したことがなかった頃は全く考えられなかった。
こうして話している今でも不思議だと感じるときがある。
キセキの先輩たちの中でも、赤司先輩は一番遠い存在だった。
おまけに、美里香の話からすると、私が好きだったということを赤司先輩は知っているはずなのに。
そのことに関しても何か聞きたいことはあるだろうに、特にこれといった追求をしてこないことが不本意ながらにありがたい。
赤司先輩に限ってありえないと思ってはいるけれど、露骨に嫌がるような素振りをされなくてつくづく安心してしまう。
とりわけ、赤司先輩とは派手に盛り上がった話はできない。
けれど、落ち着いた時間を過ごせる。
もしも一人だったら、やきもきしながら登校していたに違いない。
そこまで人がいなかったから、何事もなく学校に到着した。
昇降口までやってきたところで赤司先輩に声をかけられる。
「こっちは三年の下駄箱だぞ」
「えっ!あ、本当だ…」
「しっかりしろ」
「ご、ごめんなさい」
「…まあ、あまり気を張り詰めてばかりいても仕方ないからな」
「…」
「とにかく、ちゃんと教室に行くんだよ」
「…はい」
気が緩んでいたとはいえ、恥ずかしいところを見られてしまい声が小さくなる。
ふっとおかしそうに笑って、赤司先輩は先に行ってしまった。
ぼんやりしていないでしっかりしないと、そう思いながら自分も教室に向かっていく。
これといって面白い会話はできなかったけれど、赤司先輩と話せて本当に楽しかった。
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